Reverse Pitch2021#5|デジタルとアナログのほど良いバランスの社会実現を目指して。

TRIBUS 2021リバースピッチに登壇したリコーの事業部を紹介していくシリーズ。リコーの主力事業であるMFP(Multi Function Printer:複合機)をメインで扱う RDP (リコーデジタルプロダクツビジネスユニット) で、戦略的かつ先鋭的に新規事業開発に取り組むSC事業戦略室が登場します。リバースピッチでは、「オンライン接客」をフックに小売業界の新規事業(草案)をご紹介しましたが、その背景にあるのは「デジタルとアナログのほど良いバランス」というコンセプト。それはデジタルという新世界をハードでどう拡張できるかという全世界共通のテーマでもあります。目指す世界、ご一緒したいスタートアップのイメージなどを聞きました。  
RDP SC事業戦略室 事業企画グループ 星謙太郎

  ――RDP SC事業戦略室について、改めてどのようなセクションであるのか、お教えください。 RDP(リコーデジタルプロダクツビジネスユニット)は、リコーがデジタルサービスの会社になるうえで、その基盤となるハードウェアを開発、製造するユニットです。仕事の8割はMFPやそのトナーなどに関するものが占めています。 SC事業戦略室はその中でも、オフィス内のコミュニケーション領域の商品を扱う比較的新しい事業部門です。これまでに、プロジェクター、インタラクティブホワイトボード、ミーティングデバイス、セルフサービス端末などがあり、そのソフトウェアやアルゴリズム開発も事業領域としています。 現在は、そこから“染み出していく”領域に事業エリアを拡張しているフェーズです。例えば、働く場がオフィスからホームへ変わったことや、映像・音声のデジタル化などがあり、いろいろな展開を増やしていきたいと考えています。 ――リバースピッチでお話になった、デジタル接客や購買体験における新しいUX(ユーザーエクスペリエンス)の創出について、その内容とご提案に至った経緯をお教えください。 SC事業戦略室のコミュニケーション製品の現場展開におけるキーワードのひとつに「接客」がありました。 デジタルとアナログが融合していくのは、どの業界でも同じだと思いますが、接客、小売の業界では、オンラインとオフラインのシームレスな融合が顕著に進んでいます。ECシフトが進み、Eコマースの比率が30%を超えると店舗への回帰が起き、リアル店舗の再定義をする必要も生じています。コロナ禍も相まって顧客体験の変化が速く、新しいOMO(Online Merges with Offline)が求められる面白い領域です。 例えば「Amazon Go※」は分かりやすい例でしょう。購買がデジタル化されるだけでなく、手にとった行為がウィッシュリストに追加されるなど、アナログとデジタルがうまく融合しています。 リコーとしても、セルフ端末のオンライン接客だけですと、“リコーらしさ”が発揮できず、競合も多いこの市場を勝ち抜くシナリオが描けません。そこで、リアル店舗も含め、デジタルとアナログをつなぐ新しいUXを提供する事業に取り組んでいるところで、その領域のスタートアップの皆さんにもジョインしてほしいと考えています。 また、小売は顧客の育成の必要がないというメリットがあります。一般的に新しい価値提供をする事業は顧客育成のフェーズが必要となり、顧客伴走型でサービスを立ち上げていくベンチャーであればマッチしますが、大きな企業の新規事業にはあまり向いていないのです。

※「Amazon Go」はAmazon Technologies, Inc.の商標または登録商標です。

――背景にある社会課題はどのようなものでしょうか。または、どのような社会を作りたいと考えているのか、その世界観をお教えください。 大きくは、デジタルとアナログがほどよい距離感で共生する社会をイメージしています。単に、デジタルに迎合するのではなく、デジタルとアナログの間にあるコミュニケーションの難しさを解決する事業に取り組みたいと思っています。例えば、スマホを忘れてもスマホを持っているのと同じことができる社会と言えば、イメージしやすいでしょうか。 その実現にはさまざまな課題がありますが、デジタルの恩恵を受けられない層がいる情報格差の問題が顕著な例ではないでしょうか。 そういう人たちがデジタルの恩恵を受けられるようにするには単にデジタルインフラ・サービスを拡充するのではなくアナログとのバランスで成り立つものではないかと考えています。 例えば、高齢者のオンライン診療が実現すれば、通院する必要がなくなって全ての人がより便利になるかと言えば、決してそうではないでしょう。もっとアナログとデジタル双方の利点を活かした、手触りのある何かを作ることはできないのか、という課題意識があります。SC戦略事業室としても、デジタル一辺倒ではなく、アナログとバランスを実現する商品・サービスを創り出したいと考えています。 ――リコーとしても課題を感じていらっしゃると伺いました。 リコー社内と自身の事業部に、刺激を与えたいということを考えています。具体的には、スタートアップの皆さんとご一緒することで、そのスピード感、現場感を社内の社員にも知ってほしいということ。 リコーでも「現場主義」を推奨していますが、現場に立つ機会は人それぞれです。数回行っただけでは見えてこないような、本当の現場を知らないまま会社員生活を終えてしまう人もいるんじゃないかと思います。しかし、新規事業開発に携わっていると、現場がすごく重要だと感じます。現場を良く知るスタートアップの体質、文化を社内に入れていきたいと考えています。 ――どんなスタートアップにエントリーしてほしいとお考えでしょうか。 リバースピッチでもご紹介したオンライン接客や、OMO、それから大手企業向けにサービスを提供しようとしているスタートアップの皆さんでしょうか。また、顧客企業の課題は一様ではなく、現場に学び、潜在的な問題の中から共通項を探り当て、型を作っていくことが必要であるため、デジタルプロダクト・サービスと現場を往来しながら取り組めるアジャイル開発能力の高いスタートアップに期待しています。 一方で、広くはデジタルとアナログのギャップを埋める、またはマージするセグメントであれば、どのような事業領域のスタートアップでもと思います。例えばかなり広い意味での映像、音声の領域。ステージとしては、アーリーでも成熟していても。新規事業創出ミッションの強い事業部なので、こちらがすでに持っているテーマにジョインしていただいてもいいし、ゼロイチでもいい。開発セクションもあるので、シーズ技術をゼロから0.5にするくらいの活動でもご一緒できます。要素技術を持ったベンチャーさんも大歓迎。領域やステージを気にせずご応募いただきたいと思います。 ――ご一緒した場合、どのような支援を受けられるのでしょうか。 開発から実証実験や販売まで、幅広い支援ができると思います。技術的なサポートももちろんあります。 例えば映像・音声周りでは、360°カメラや画像処理などエッジデバイス関連のハードウェア開発リソース。また、ワールドワイドな顧客接点力と、フィールドサポートなども提供が可能です。 ――今後の展開について、TRIBUSへの期待も含め、お教えください。 当事業部としては、デジタル支援(医療、行政・自治体)やデジタル接客(オンライン、小売店舗)などのジャンルで、新しい価値提供を検討しています。TRIBUS 2021では、我々の既存テーマへのジョインも期待していますし、デジタルとアナログをつなぐ新しい視点を持ったスタートアップさんがいらっしゃることにも期待しています。 新規事業開発はさまざまな可能性を試していくことが大切です。とにかくどなたでも、バッターボックスに立ってほしい。どんな関わり方でも、ご一緒できればありがたいです。 私は、TRIBUSの企画段階で事務局メンバーから相談を受けたことがあり、本当は一緒にやりたい!と言いたかったのですが、あれこれアドバイスしているうちに言いそびれてしまったということがありました(笑)。スタートアップがリコーに入ってくる面白い制度だと思いますし、リコーにとっても外部から刺激を受けて成長できる良い機会。ぜひスタートアップの皆さんの不退転のメンタリズムをリコーに注入してほしいと思いますし、ともに素晴らしい製品、サービスを世の中に送り出せたらと思います。 リバースピッチの動画はこちら▼



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