挑戦は日常の延長線上にある。リコーと住友商事の若手による「Co-LAB ―住友商事×リコー若手共創プログラムー」が生む意識改革

細内 梨央
住友商事株式会社
デジタル戦略推進部 MIRAI LAB PALETTEチーム
兼 新事業投資第二ユニット
渡邉 日奈子
株式会社リコー
未来デザインセンター 神山まるごと共創室 兼 TRIBUS推進室
若手の「モヤモヤ」から生まれた共感と共創
――まず、「Co-LAB」という企画が生まれたきっかけを教えてください。
渡邉:きっかけは、会社の事実を知るために実施した若手社員1~7年目へのTRIBUSの認知度調査でした。そこから、ヒアリングを実施してチャレンジに対する若手のリアルな声を引き出しました。「チャレンジしてみたいが一歩目が重い」「本業との両立が不安」「誰に相談すればよいのかわからない」「周りの若手がどんなことをしているのか分からない」という声が多く集まったんです。制度や仕組みは十分に整っているけれど、使い方や相談先がわからない。「見えない壁」が存在していることがわかりました。そうした「モヤモヤ」を感じている若手社員に向けて、まずは、若手が自分の目指していることや悩み、会社のことを仲間と話せる場や繋がる場をつくりたいと考えていたときに、かねてから事務局同士の交流があった住友商事さんのチームとお会いする機会があったんです。そこで、若手に対する施策を考えているなら、若手同士で話した方がいいと背中を押されて、細内さんと知り合いました。
株式会社リコー 渡邉 日奈子
細内:渡邉さんとお話するうちに、私の周りでも同じような意見を聞いたことがあることに思い当たったんです。「目の前の業務でいっぱいいっぱいになっている」「社外との繋がりが希薄になり視野が狭まっている」といった若手特有の課題が多くありました。商社なので外部との接点は多いのですが、営業や仕事の打ち合わせで出会う方々の多くは、上の世代の方々です。実は同世代の接点は少なく、同じ目線で視野を広げられる機会が少ないという悩みを抱える人が多いんです。
私はオープンイノベーション業務に関わっていて同世代の社外の方々とも話す機会が多かったので、幸いにもそこから得られる刺激の大きさを知っています。そんな若手が抱える課題意識を同世代の渡邉さんと話すうちに、やりたいことや思いが共有できてとてもワクワクしました。こうして他社の方とつながることが一歩踏み出すきっかけになるのではと思ったことも、今回の企画内容につながっています。
住友商事株式会社 細内 梨央
――実際にどのようなプログラムを実施されたのでしょうか。
渡邉:両社の若手社員を対象に、6月から8月にかけて全3回にわたる新規事業の立案プログラムを開催しました。第1回は参加者同士の交流を目的としました。50名以上が参加し、自己紹介や自社紹介を通じて、互いの強みや課題を知る時間をつくりました。それだけでも十分に刺激になった、気づきがあったという感想も多かったです。終了時間が迫ってもまだ時間が足りないという様子で、その後そのまま飲み会を実施した方々もいたほどです。
細内:私たちが参加者と同じ立場、つまり「何かにゼロからチャレンジする若手」であったということも、交流が盛り上がった一因になったと思っています。同じ会社の同世代の社員がゼロから新しい企画を立ち上げて実践しているということが、刺激にも安心材料にもなったようです。
その後、具体的に新規事業のアイデアを出し、プレゼンするところまでをゴールとしました。具体的には、関心のある社会課題を軸に少人数のチームに分かれて、両社の強みを掛け合わせた新規事業のアイデアを検討しました。第3回で各チームから10分間ずつ発表をしてもらうというゴールに向かって、各チームで準備を進めてもらう形にしました。
渡邉:ここには一人で考えるのではなく、チームで同じ目標を持って取り組むことの大切さを体感してもらいたいという狙いがありました。2回目と3回目の間は夏休み期間でしたが、自主的に集まって準備を進めてくれたチームもあったそうです。こちらからそういった指示や提案はしていなかったので、チームで話し合い、連絡を取り合って自主的に動いてくれたということがとても嬉しかったのを覚えています。

挑戦は逃げ場ではなく、日々の延長線上にある
――参加者の反応はいかがでしたか。
渡邉:「自分の会社をあらためて好きになれた」という声が印象的でした。他社の視点から意見をもらったり刺激を受けたりすることで、普段は見えていなかった会社の良さに気づくことができ、それが会社への感謝に変わって、現業へのモチベーションに変わる。そんな好循環が起こっていたのではないかと考えています。
細内:私が一番嬉しかったのは、「本業にも前向きに取り組めるようになった」という感想です。新しい挑戦が「別の仕事」ではなく「日常の延長線上にある」と気づいてもらえたのかなと思います。
そうした変化に繋がったのは、3回のプログラムを通して短期間ではあるにせよ「継続的に取り組んだ」ことも大きく影響しているのかなと感じています。あるイベントに参加してモチベーションは上がったけれど、翌日には日常に戻ってしまい、一時的な熱量で終わってしまうことが多いなと私自身も課題に感じていたこともあって。今回3回という構成にして、最終的に10分間の発表をしなければならないというゴールを設けることで、お互いの理解やアイデアを深める時間ができたのだと思っています。だからこそ、本業に持って帰ってもらえる何かが生まれたのではないかと感じています。

渡邉:私もその言葉は嬉しかったです。二人で立ち上げた時から、私たちの自己満足にならないように、若手社員にとってどんなプログラムが必要なのか、どんな内容にすれば持ち帰ってもらえるものが多くなるのかということを議論して臨んだので、純粋に「やってよかったな」と思えた感想でした。
――異なる企業同士で運営するのは大変だったのでは?
細内:最初は不安もありました。渡邉さんと話していると熱量も高まるのですが、会社に戻ると「意味のある取り組みだと思ってもらえなかったらどうしよう」と急に不安になってしまって。そんななか、上司が「やると決めたら、それを正解にしていけばいい」と背中を押してくれたんです。その一言で覚悟が決まりました。
渡邉:私もゼロから何かを立ち上げるというのは初めてだったので、不安が大きかったです。でも、私も上司に「失敗はない」と言われて救われました。正解が見えず悩むことも多かったんですが、同僚や人事の方々も「まずはやってみよう」と支えてくださったおかげで、リコーの上層部にもプログラムの意義や思いが伝わり、上司の後押しで参加してくれた人もいたほどでした。

細内:社内の人って味方なんだなということをあらためて感じる機会にもなりましたよね。若手がやりたいと言ったことに対して「NO」を突きつけるのではなくて「どうやれば意味のあるものにできるか」ということを一緒に考えてくれるんです。若手はやりたいことがあれば発言すべきだということを実感しました。それから、やはり一人ではなく、同じ信念を共有している渡邉さんと一緒だから進められるという部分もあったと感じます。
渡邉:そうですね。今回のプログラムへの参加してくださった方々も「同世代の社内外の仲間がいる」と実感できたメンバーも多いのではないかと思います。 一人ではなかなか踏み出せないことも多いと思うのですが、周りに話をしてみることで、協力者を見つけられたり、何か次の道が開けたりすることがあるということを実感しましたね。
ただ、こうした応援を得られる環境をつくるには、目の前の業務に愚直に、丁寧に向き合うということが大切だと考えています。そうした土台があるからこそ周りから挑戦も後押ししてもらえるのだと思っています。挑戦って、一種の「逃げ場」のように映ってしまうこともあると思うのですが、そうではなくて、日々の業務の延長線上にあるものだと捉えています。目の前の仕事にきちんと向き合っているからこそ「やりたいこと」が生まれて、それに挑戦させてもらえる。その挑戦を通して、さらに日々の業務や会社に対する感謝が生まれる。そういう循環を生む挑戦の輪をこれからも広げていけたら、と考えています。

ボトムからも組織の環境や文化をつくる
――プログラムを経て、ご自身にはどんな変化がありましたか。
細内:私は「やればできる」ということを、渡邉さんや参加者から学ばせてもらいました。今は自社の中で、社内クロストーク企画をゼロから立ち上げる準備をしています。まだ企画段階ですが、今回生み出せたようなよいつながりは社内にもあるはずなので、それを活性化できるような取り組みを始められたらと考えています。残念ながらまだ社内には渡邉さんのようなパートナー的存在がいないので(笑)、まずは一人でゼロからイチを生み出すところにチャレンジしてみたいと思っています。
渡邉:私が感じたのは「対話できる仲間という存在の大切さ」ですね。最初は、自分のこういう活動や想いは正しいのか、自信が持てませんでした。今回、細内さんと協働してゼロイチをチャレンジしたことから仕事の悩みや理想を共有できる人がいるだけで、ぐんと視野が広がるということを体験できました。参加者を見ていても、同じような課題や想いを持った仲間とつながるだけで、安心感が得られたり、刺激をもらえたり、日々の活力につながっているのではないかと感じます。

細内:広がるという意味では、自分のできることも広げられたと感じました。これまで、上司から依頼された仕事をこなしていたということもあって、何かと自分で手を動かすことで完結させることが多かったんです。時々「仕事を一人で抱える傾向があるね」と言われることもあり、自分の課題だと感じていました。ただ、今回のプログラムを実施するにあたって、どうしても一人ではやり切れない、関連する部署の方に協力を仰がなければならない場面もあって。そこで「人を巻き込んで頼っていく」やり方を学べたように感じています。
渡邉:その部署の方々はすごく応援してくれてましたよね。第3回には観覧にも来てくださって、細内さんの熱量が伝わっているんだなと思いました。
リコー会長山下さんの言葉の一つに「会社の宝は社員のモチベーション」という言葉があります。これからの未来を担っていくであろう若い社員たちが、生き生きと、自分の会社と仕事に誇りを持って働くことってとても大事だと思うんです。そのために、経営層はさまざまな仕組みや制度を用意しています。トップが変えようとしているなら、ボトムからも意識を変えていかなくちゃという思いを、今回のプログラムを通してより一層強く実感しました。働いていると不満の方にフォーカスしてしまうこともありますが、捉え方ひとつや、きっかけで「良い会社」と思えることができて、そんな自社に感謝ができます。それがモチベーションにつながるんです。働きがいのある環境は自分たちでつくっていく。そんな意識をこれからも大切にしていきたいです。
第1回の様子
PHOTOGRAPHS BY YUKA IKENOYA (YUKAI) TEXT BY MARIE SUZUKI