新規事業におけるすべての経験を重要な価値として。
社内起業家3期生「卒業式」レポート

TRIBUS(トライバス)は社内外からイノベーターを募り、リコーのリソースを活用してイノベーションにつなげるプロジェクト。事業領域にとらわれず社会の広い分野での課題解決を目指します。この度、社内起業家3期生が4年間のTRIBUSでの活動を経て卒業を迎えました。卒業式では活動報告と事業の今後の展開などを発表しました。


卒業を迎えたチームとリーダー ※発表順

【サトラス】鴻上和彦
AIを活用したオンライン商談記録・分析サービス

【STAYTHEE】菊池敦史
電源不要の水中浮力調節器「STAYTHEE」を販売


開会の挨拶は、TRIBUS事務局の森久が務めました。

開会の挨拶をする森久氏

「皆さん、改めまして、事務局の森久です。ここからは、2021年度採択チームの卒業式を開始させていただきます。

卒業式とは何か、と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。特に社外の方にとっては、なじみのない取り組みかもしれません。

新規事業は、決して簡単にうまくいくものではなく、想定通りに成長させることは難しいものです。もちろん、順調に進む事業もありますが、一方で、思うような結果に至らないケースも存在します。そうした事業は、いつの間にか表に出ることなく終わってしまうことも少なくありません。

しかし私たちは、そのような取り組みも含めて、新規事業におけるすべての経験を重要な価値として捉えています。うまくいったことだけでなく、思い通りにいかなかったことも含めて、組織の経験として蓄積していきたいと考えています。

こうした考えのもと、『卒業式』という形式を設け、各事業チームの皆さんにこれまでの歩みを振り返っていただき、社内に共有する機会として本イベントを開催しています。

なお、この卒業式は今回で3回目の開催となります。今回は、2021年度に採択されたチームに活動報告を行っていただきます。

それでは、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。」

1.サトラス
鴻上和彦

鴻上氏は、TRIBUSにおける新規事業開発の経験をもとに、「事業の終わりを、次なる始まりに」というテーマで発表を行いました。

鴻上氏は、コロナ禍において完全リモートで活動していた環境下で、「サトラス」という営業支援サービスの開発に取り組みました。本サービスは、AIが商談に同席し、営業担当者に対してリアルタイムでフィードバックを行うサービスです。オンライン商談の普及を背景に、営業活動における課題解決を目的として構想されました。

検証初期の約4か月間は、有償契約の獲得には至らなかったといいます。無償トライアルの提案には一定の反応があったものの、「AIの精度に対する不安」や「営業現場での運用負荷」などを理由に、導入には至らないケースが多かったと説明しました。

こうした状況を受け、鴻上氏のチームはサービスの方向転換を決断しました。既存ユーザーとの対話を重ねる中で、商談支援ツールとしての機能提供から、商談データを活用した分析サービスへと再設計を行いました。これにより、マーケティングや営業改善に活用できるインサイトを提供する形へと転換しました。

その結果、テスト販売開始以降、MRR20万のビジネスとなったほか、契約後の解約が発生しなかったことにも言及しました。一方で、収益面における目標には届かず、2025年3月にサービスのクローズを決定したといいます。

現在鴻上氏はリコーITソリューションズへ異動し、新規事業創出に関わる業務に従事しています。自ら事業開発を行うとともに、社内の新規事業支援にも取り組んでいるといいます。

具体的には、観光事業者向けのデジタルガイド作成ツール「ARGS」や、ショート動画の企画を生成する「リコー ショート動画デザイナー」といったサービスを紹介しました。これらはいずれも、AI技術を活用しながら業務効率化や価値創出を支援することを目的としています。

最後に鴻上氏は、チームで共有していた言葉として「勝つまで続ける」を挙げ、これまでの取り組みと現在の活動についての説明を締めくくりました。

2.STAYTHEE
菊池敦史

「STAYTHEE開発おじさんたちの挑戦物語」と題し、菊池氏よりTRIBUSにおける活動報告がされました。

プロジェクトとして取り組んだ「STAYTHEE」は、水中カメラの浮力を調整する機器であり、撮影時の安定性向上やダイバーの負担軽減を目的とした製品です。中性浮力を実現することで、手放しでの撮影や新たな撮影体験を可能にする点が特徴として紹介されました。

活動としては、自社ECサイトを立ち上げて販売を行うとともに、展示会や体験会、ダイビングツアーへの参加など、リアル接点でのプロモーション施策を実施しました。また、Web広告やSNSを活用した集客にも取り組んだといいます。

製品開発においては、当初は単一機種のみ対応していた仕様から、最終的には複数機種に対応可能な形へと改良が進められました。

販売面では、2022年から2024年にかけて数量限定でのテスト販売を実施し、3年間で約200台、売上約950万円という結果となりました。各年とも完売には至ったものの、販売期間に時間を要する状況が続き、事業としての拡大には課題が残ったとされています。

そのため、自社での継続的な販売は難しいと判断し、外部企業への技術譲渡という出口戦略を選択されました。譲渡された技術は、その後新たな製品として展開されているとのことです。

一方で、外部からの評価として、グッドデザイン賞の受賞およびベスト100選出、さらに宮城県の工業製品認定を受けたことも報告されました。

また、製品開発と並行して、水中映像を活用した複数の取り組みも紹介されました。360度映像を用いたコンテンツや観光向けの映像投影、水族館との連携による実証実験などが実施され、イルカの出産記録撮影への協力といった事例も挙げられました。

最後に、本プロジェクトは個人の課題意識からスタートし、企画・開発・販売まで一貫して取り組んだ経験であったことが述べられました。現在は、各メンバーが新たな環境において業務に取り組んでいることが説明され、発表は締めくくられました。

株式会社Spiral Innovation Partners ジェネラルパートナー
岡洋氏

卒業される皆様、ここまで大変お疲れさまでした。また、ご卒業おめでとうございます。

卒業とはいえ、ここが一つの区切りであると同時に、これから新たなチャレンジのスタートでもあると思います。今後のご活躍を期待しております。

今回の取り組みについては、うまくいかなかった点や、思い通りに進まなかったことに対して、さまざまな思いを抱えていらっしゃるかと思います。しかし、本日の発表を拝見する限り、皆様は十分に成果を出されていると感じました。大きな成功ではなかったとしても、これまでの実績や取り組みについては、ぜひ自信を持っていただきたいと思います。

また、それぞれのプロジェクトには特徴的な強みがあったと感じています。外部の関係者を巻き込みながら事業を推進し、その経験を次の取り組みに活かしている点や、技術や知的財産を外部へつなぐことで価値を社会に還元している点など、いずれも重要な取り組みです。

さらに、活動の途中でメンバーの離脱といった困難な状況があった中で、それを乗り越えて最後までやり切った点も、一つの成果であると考えます。スタートアップにおいても、組織の変化や困難に直面するケースは多く、その中で継続すること自体に大きな意味があります。

今後に向けては、今回の経験を抽象化し、再現可能な形で整理していくことが重要だと思います。資金、人材、プロダクト、販売手法、競争優位性といった観点から、何が機能し、何が課題であったのかを整理することで、次の挑戦に活かすことができるはずです。

また、戦い方を変えるという視点も重要です。これまでの方法で十分な成果が得られなかった場合には、新たなアプローチを検討する必要があります。例えば、外部資金の活用やM&A、人材の確保など、これまでとは異なる手法を取り入れることも選択肢の一つとなります。

本日ご参加の後輩の皆様も、皆様の今後の活躍に注目されていることと思います。ぜひ今回の経験を糧として、今後のさらなるご活躍につなげていただければと思います。

以上をもちまして、私からのコメントとさせていただきます。ありがとうございました。

株式会社ANOBAKA パートナー
萩谷聡氏

皆様、ご卒業おめでとうございます。お疲れさまでした。

祝辞というと少し重く感じられるかもしれませんが、今回の発表は非常に印象に残っています。両チームとも、当初のアイデアの段階からよく覚えております。カメラを活用したユニークな取り組みや、営業AIという領域で新たな価値創出に挑戦された点など、それぞれのテーマにおいて特徴的な事業だったと感じています。

数年間にわたり、一つの事業に向き合い続けてきたことは、大変意義のある取り組みであったと思います。私自身、シード期のスタートアップに投資する立場として多くの事業を見てきましたが、事業を立ち上げ、プロダクトを形にし、さらに出口までやり切るケースは決して多くはありません。

その点において、今回の両チームは事業として一定の形をつくり、出口まで到達されたことは一つの成果であり、周囲の方々にとっても印象に残る取り組みであったのではないかと思います。今後、新たな挑戦をされる際にも、多くの方が応援したいと感じる存在になっているのではないでしょうか。

また、今回の取り組みを通じて生まれたアイデアや技術は、それぞれ次の領域にも活かされていくものだと考えます。営業領域における新たなツールの可能性や、水中でのカメラ体験といった分野において、今後さらに発展していくことが期待されます。こうしたイノベーションの種が積み重なることで、より大きな価値創出につながっていくのではないかと感じました。

このような取り組みを継続していくことは、企業としても、また個人のキャリアにとっても重要な経験であると思います。

スタートアップの世界ではシリアルアントレプレナーという言葉がありますが、皆様にもぜひ次の挑戦に進み、さらなる事業創出に取り組まれることを期待しております。

改めまして、ご卒業おめでとうございます。ありがとうございました。

株式会社ゼロワンブースター代表取締役 
合田(剛)ジョージ氏

今回の発表を拝聴しながら、世の中にはさまざまな濃淡があるものだと改めて感じました。

成功と失敗という観点で申し上げると、私自身もこれまでに10件以上の事業に関わってきましたが、成功と言えるものはごくわずかであり、大半はうまくいかなかった経験です。そのため、結果の成否そのものについては、必ずしも重視すべきポイントではないと考えています。

一方で、今回の取り組みから持ち帰っていただきたい点として、事業環境の変化があります。当時と現在とでは、事業を取り巻く状況は大きく変わってきていると感じます。近年はその潮流にも変化が見られ、単なるブームから、より本質的な価値創出や事業規模の拡大に重きが置かれるようになってきています。

特に、テクノロジーを基盤とした事業や、グローバルでの展開を見据えた成長戦略が重視される傾向が強まっており、日本においてもその流れが反映されていると認識しています。

社内起業においても同様で、近年は市場戦略の重要性が一層高まっており、初期段階でどれだけ精緻に設計できるかが、事業の成否に大きく影響する状況になってきていると感じます。また、Webやデジタルの活用は有効である一方で、場合によっては事業推進の制約となる側面もあると考えられます。

その中で重要なのは、今回のように実際に事業に取り組み、結果を出すまでやり切った経験そのものです。特に社内においては、仮説に対して強い確信を持つあまり、外部の意見が届きにくい場面もありますが、実際の経験を通じて得られる気づきには大きな意味があります。

一方で、社内起業では途中で検証が不十分なまま終わってしまうケースも見受けられます。その点において、今回のように最後まで取り組み、一定の結論まで導いた経験は、今後に活かせる知見として重要であると考えます。

こうした経験を積んだ方々は、他社においても評価されている例が見られます。実際に、新規事業での挑戦や失敗を経て、その後組織内で重要な役割を担っているケースも少なくありません。

皆様におかれても、今回の経験を一つの基盤として、今後の業務や組織への貢献につなげていただければと思います。こうした知見が蓄積されることで、企業としての競争力向上にも寄与していくものと考えています。

リコー 先端技術研究所 所長 
山田泰史氏

本日は卒業式ということで、ご卒業された皆様、誠におめでとうございます。

先ほど「おめでとうございます」と申し上げましたが、本当におめでとうと言えるのかという議論もあったかと思います。ただ、私は率直に、本当におめでとうございますとお伝えしたいと思います。

私たちも研究所でさまざまな取り組みを行っていますが、数年間という時間を一つのテーマに投じ、その経験を積まれたこと自体が非常に価値のあることだと感じていますし、今後につながる重要な経験であると考えています。

本日の発表を通じて、現在の企業活動における課題も改めて感じました。一つは、専門化が進み、それぞれが自分の領域に特化する傾向が強まっている点です。研究所であれば技術だけ、営業であれば営業だけといった形で分業が進む一方で、全体像を捉える機会が少なくなりがちです。その結果、実社会との乖離が生じることもあります。

一方で、今回の取り組みでは、技術・営業・事業推進などを一体として担う必要があり、事業の全体を俯瞰する経験が得られたのではないかと感じました。これは実際のビジネスにおける重要な要素であり、貴重な学びであったと考えます。

もう一つは、人材に関する点です。本日の発表の中でも触れられていましたが、ベテランの方々が積極的に取り組まれていたことが印象的でした。経験を重ねた方々が「最後の挑戦」として取り組むことで、大胆な意思決定や挑戦が可能になる場面もあると感じています。

一方で、今後は若い世代がこうした取り組みを引き継いでいくことも重要だと考えます。その際には、挑戦の過程で生じる失敗をどのように受け止め、次につなげていくかが重要になります。失敗を許容し、その後の成長につなげる仕組みが求められます。

研究の分野においても、成功に至る割合は決して高くなく、多くの試行錯誤の中から成果が生まれます。そのため、失敗の経験をどのように活かしていくかが、組織にとっても重要な要素となります。

本日の卒業報告も、そうした次の挑戦へとつながる取り組みの一環であると感じています。ご参加の皆様にも、このような経験が次につながっていくという視点で捉えていただければと思います。

リコー 顧問 
赤羽昇氏

第3期の卒業を非常に嬉しく思います。皆様のことは当初からよく覚えております。

いずれのチームも初期段階から非常にセンスがあったと感じています。特に、自ら事業を立ち上げるとはどういうことか、その本質を理解されていたように思います。また、市場におけるニーズについても、大きな視点で捉えられていた印象があります。

これまでの議論の中では「失敗から学ぶ」といった表現もありましたが、私としては決してそのようには捉えておらず、両チームともに成果を上げられたと認識しています。

その理由として、いずれの事業も市場ニーズを的確に捉えていた点が挙げられます。ニーズが存在し、対価を支払う顧客もおり、技術的な裏付けも備わっていました。一方で、実際の市場においては、顧客は単に「一定のニーズが満たされている」という理由だけでは購入に至らず、個別具体的な価値、すなわち“最適解”が求められます。

今回の取り組みにおいては、その「どこが本当にベストなのか」という点を突き詰める過程に多くの時間と労力が費やされたのではないかと感じています。一方で、対象を広く捉える中で、必ずしも最適ではない領域にも対応しようとしたことが、難しさにつながった側面もあったのではないかと推察します。

また、もう一つの観点として、特定の価値を見出した顧客に対して、いかに的確にアクセスするかという点も重要です。市場の中には、その価値を必要とする顧客が分散して存在しており、そこへ効果的にアプローチするには、別のスキルや戦略が求められます。この点についても、取り組みの中で試行錯誤があったものと受け止めています。

結果として、いずれのチームも技術の譲渡や事業の継続といった形で、価値を次につなげる出口に至っています。また、環境の変化や技術の進展の中で、事業が新たな形で発展していく可能性も示されました。

以上を踏まえ、今回の3年間は、価値の本質を見極めるための重要なプロセスであったと考えており、その意味において十分に成果のある取り組みであったと認識しています。

改めまして、この3年間の取り組みについては自信を持って振り返っていただければと思います。

最後になりますが、ご卒業おめでとうございました。

リコー 取締役会長 
山下良則氏

改めまして、ご卒業おめでとうございます。

私はこれまで、入学よりも卒業を大切にしてきました。むしろ、入学よりも卒業の方が難しく、そしてその先の未来に向けた新たなスタートという意味で、非常に重要な機会であると考えています。そうした意味でも、この卒業式という取り組みは今後もぜひ継続していただきたいと思います。

最近特に感じていることとして、「何かをやり遂げようとする人」に対する賞賛と感謝こそが、組織活動の原点であるということがあります。そうした観点から見ても、本日の発表は非常に印象的でした。以前の発表時と比べても、より落ち着いた、清々しいプレゼンテーションであり、これまでの取り組みがしっかりと表れていたと感じました。

また、今回の2つの事業は、2021年という時代背景を非常によく反映していたと感じています。営業支援サービスについては、リモート環境が急速に普及した直後というタイミングであり、当時の課題に正面から向き合った取り組みであったと認識しています。一方で、その後のAIの進化により、顧客ニーズが変化していった点も含めて、時代の流れを象徴する事例であったと感じています。

また、水中カメラのプロジェクトについては、「挑戦」という言葉が非常によく当てはまる取り組みであったと思います。メンバー構成も含めて印象的であり、当初の段階から意欲的な姿勢が見られました。個人的にもダイビングの経験があるため、製品のコンセプトには共感する部分がありましたが、実際に事業として展開していく難しさも同時に感じられる内容でした。

本日の発表では、取り組みの成果とともに、その裏側にある難しさも率直に共有されており、この3年間の積み重ねが伝わってきました。

最終的には、こうした挑戦を通じて、次の未来を担う人材が育っているという点に大きな意義があると感じています。個人としてだけでなく、チームとして

も次の取り組みをリードしていく力が培われていると受け止めました。

今後のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。ありがとうございました。

本日卒業式に参加されたTRIBUS3期生のお二方は、宮城県および鹿児島県から東京の本社ホールへお越しいただきました。

コロナ禍を経てオンラインでの働き方が当たり前となる中、様々な拠点に散らばるメンバーと共に事業創出する姿を体現されたお二人でした。

リーダーをはじめ両チームに参加された皆様は、TRIBUSで得たかけがえのない経験や知見を糧に、それぞれのネクストステージへと進んでいきます。

TRIBUSは今後も「事業」「人」「挑戦する文化」を育み続け、共創イノベーションの輪をさらに広げてまいります。

引き続き、TRIBUSおよび新しい価値創造に挑戦するチャレンジャーへのご支援・ご声援をよろしくお願いいたします。




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