Reverse Pitch2021#2|次世代太陽電池で、世の中の常識を変える冒険へ。

Energy Harvesting事業センターは、TRIBUSに先駆け、社内の優れたアイデア、人材を発掘する目的で実施されたリコー・インターナル・スタートアップ・プログラム(RISP)からスピンアウトしてきた事業部であり、ある意味TRIBUSの先輩であり先達だと言えるだろう。その先輩が、リバースピッチで伝えたかったことは「常識を疑え」「冒険しよう」だ。室内の微弱な照度を利用する環境発電で「充電のない世界」「環境負荷の低い世界」の実現を掲げる一方、次世代太陽電池というニューアイテムを使って、面白いことをやろうと呼びかける。次世代太陽電池のその先にある未来を、一緒に創ろうという熱いメッセージだ。  
Energy Harvesting事業センター 所長 田中哲也

  ――Energy Harvesting事業センターが取り組んでいる環境発電、エネルギー・ハーベスティングの事業について教えて下さい。 事業部としては4月にできたばかりですが、エネルギー・ハーベスティング事業単体としては、2019年2月くらいから組織化され、スタートしています。 エネルギー・ハーベスティングとは、光、振動、温度差から得られる未利用エネルギーを文字通り収穫して利用できるようにするもので、その中で私たちがフォーカスしているのは光です。これは、ペーパーレス化やデジタル化が進んでコピーやプリンターの需要が低下することを見越し、プリンター、コピー機の心臓部のコア技術の転用を検討しているなかで見つけた出口のひとつです。コピー機の心臓部で使われる有機感光体の技術を応用し、次世代太陽電池と呼ばれる3種の太陽電池を開発しています。 太陽電池というと、皆さん屋根に設置されている太陽光パネル(太陽電池)を想像されるかと思いますが、私たちが開発しているのは室内など微弱な光でも発電できる電池です。屋根に設置されている太陽電池は雨や曇りでは、その発電力は極端に低くなり、室内ではほとんど発電できなくなりますが、私たちの電池はLEDの光でも発電できます。およそ人が生活しているところなら、いつでもどこでも発電できるものです。 現在、色素増感太陽電池(DSSC)、有機薄膜太陽電池(OPV)、ペロブスカイト太陽電池の3種類を開発していますが、ペロブスカイト太陽電池は宇宙開発と連携して進めているものですので、宇宙開発のスタートアップとの出会いもうれしいです。色素増感太陽電池はすでに商品化しており、これを利用した商品を開発したいメーカーを中心に販売しています。有機薄膜太陽電池は、商品化には至っていませんが、スタートアップの皆さんとの協業の際にはサンプルの提供は可能です。 ――手掛けている次世代太陽電池とは、どのようなものでしょうか。解決する社会課題や、どのような社会的意義があるものなのかも含め、教えて下さい。 ひとつは環境配慮です。ヨーロッパを中心に、乾電池の利用を制限する動きが広まっており、2030年までに段階的に使い捨ての電池の利用が制限されていく見込みです。また、日本では電池の回収率が非常に低く、乾電池は30%、ボタン電池に至っては1%程度だそうです。こうした電池の代替品として太陽電池の利用が進めば、社会全体で環境負荷を下げることができるでしょう。 もうひとつは、充電のない社会の実現です。私たちの世代は、ちょっとネットを見たりメールを確認するくらいでしかスマホを使いませんが、若い世代はスマホがなければ生活もままならないでしょう。充電残量が20%を切れば生きた心地がしないと思うんですよね。日常生活の中で自然に充電でき、意識して充電することのない世界を作れたらと考えています。これはスマホに限らずあらゆる機器で実現するのが理想です。 色素増感太陽電池は、LEDなどの微弱な光、人が生活できる程度の室内の光でも発電できるもので、面積あたりの発電量の高さは世界一を誇ります。とはいえ家電を動かすほどの電力ではありませんので、現在はIoT機器や、小型のエッジデバイスへの利用が想定されています。例えばコンセプト商品として作った「スマートマウス」であるとか、テレビのリモコンなどですね。温度、湿度、照度、気圧、電圧をセンシングする超小型の環境センサーも商品化していますが、そのような使い方にも向いているでしょう。閉鎖空間でも照明さえあれば発電できるので、災害時の避難所などでの利用も検討が進んでいます。現在はスマホくらいの大きさ、10円玉程度の大きさ、その中間の3種類の大きさを発売しています。 有機薄膜太陽電池は、フィルム型で軽く、曲面に貼ることもできます。透過性もあり、ガラスに貼って使うこともできるので、ビルのガラス面全体で発電するということもできるでしょう。室内から窓際や軒下などの半屋外での利用を想定しています。 どちらも、今後は材質の改良や軽量化、強度向上などを進める予定で、大学や研究機関との協業を進めています。 ――今回、スタートアップに期待することは何でしょうか。どのようなスタートアップと協業したいのか、イメージがありましたら併せてお願いします。 電池それ自体の開発・性能向上ではなく、これを使って何をするか?というアイデアをお持ちの方と協業したいと考えています。 現在、この太陽電池は「乾電池・ボタン電池の代替品」と捉えられている傾向が強いです。しかし、それだけだと利用の幅が広がらないうえ、乾電池との価格競争という不毛な戦いになってしまう可能性もあります。超小型センサーのように、この太陽電池だからできること、この太陽電池にしかできないことを実現したい。その意味では、太陽電池の性能がどうこうといった知識やノウハウをお持ちである必要はまったくありません。ジャンルもまったく絞り込むつもりもないので、この太陽電池を使える!と思った方は、ぜひ応募してほしいと思います。 そういった可能性は、私たちもいろいろ考えているところです。例えば、冬が長かったり、地形的に日照時間が短かったりする地域だったら、年間トータルで考えると屋根上の太陽電池よりも、次世代太陽電池のほうが発電量が高くなるんじゃないかとか、発電量が面積と光量に比例するので、発電量そのものがセンサーとして機能できるんじゃないかとか。 しかし、私たち30人くらいで考えているとアイデアも凝り固まってきてしまい、アイデアがあっても大企業の事業部で扱いにくいものもあります。スタートアップの優れたアイデア、スピード感、フットワークの良さを活かして、うまくコラボできればと思っています。 ――スタートアップにどのような支援をする予定ですか。 色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池をそのまま提供することが可能です。設計のできる方はそのままご利用いただくこともできますし、設計の機能がない会社には、設計の面からもサポートします。電源として使いたいだけであれば、すぐつないで使えるように基盤も組み込んだキットでの提供も可能です。 ――TRIBUSに期待していることは何でしょうか。 私は、「冒険できること」がTRIBUSのいいところだと思っています。 ある程度の年齢、事業部の規模になると、いいなと思ってもやっぱり冒険的なことはやりづらくなってしまうので、その意味で、TRIBUSを見ていると本当にうらやましい。もちろん本流の事業はやらないといけませんけど、もっと違うことをやってみたい、チャレンジしたいことに取り組める仕組みだと思います。社外のスタートアップに対しても、優れたアイデアは、リコーの技術や業種業界に限らず応援するというのは素晴らしいことだと思います。 しかし、TRIBUSも3年目となり、今まで以上に事業と呼べるものに成長させることも求められると思います。一昨年、昨年と豊富なアイデアの中からいくつかのプロジェクトが採択され、取り組みが始まっていますが、ギアをチェンジして、次に続く人のために道を拓いてほしい。今回エントリーを考えているスタートアップの皆さんも、冒険すること、そして事業化を加速するためにリコーを使って頂けたらと思います。 ――スタートアップの皆さんに一言お願いします。 繰り返しになりますが、ジャンルやお持ちの技術はまったく問いません。解決する社会課題も、ある意味なんでも良いと思っています。私たちのこの太陽電池を使い、このフィールドでやりたいことがあれば、どんどん応募してください。 スタートアップの皆さんとは、世の中の常識を変えることに挑んでいきたいと思っています。「充電のない社会」もそうです。寝る前に充電することがなくなる社会、『チャージ』という言葉の意味がなくなってしまうような社会です。30年前に、現在のようなスマホのある社会を誰も想像できなかったわけですから、今現在、当たり前だと思っている常識を疑い、変えていこうとするマインドをお持ちの皆さんとご一緒できたらうれしいですね。 充電だけじゃなく、私たちの技術を面白く使って冒険してくれるスタートアップの皆さんの応募をお待ちしています。 リバースピッチの動画はこちら▼



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