Reverse Pitch2021#1|まだ見ぬ脱炭素社会・循環型社会に向けて、環境ビジネスの開拓者求む。

環境・エネルギー事業センター(静岡県御殿場市)は、MFP(MultiFunction Printer)のマザー工場から、2016年にリユース・リサイクルおよび環境ソリューションの開発拠点へと生まれ変わったもので、リコーの環境経営の象徴的な存在でもある。そのセンターが現在取り組むのは、脱炭素社会・循環型社会の実現に資する技術とソリューションの開発だ。しかし、環境課題は、社会的な機運は高くとも一筋縄ではいかないことは、携わる者ならば誰もが知るところ。今回のリバースピッチとインタビューでは、その内情を詳らかに語り、スタートアップの参画を呼びかけている。センターが持って生まれた公益性の高い精神は脈々と引き継がれ、社会価値の創出という形で現在のTRIBUSにも宿っていると言える。取り組む領域は違えど、TRIBUSと近い精神を持つひとつへのエントリーは、スタートアップにとっても意義深いものになるだろう。
環境・エネルギー事業センター 循環型ソリューション開発室長 原田忠克

  ――環境・エネルギー事業センターの現在の事業内容を教えて下さい。 環境に関する事業を手掛けており、大きくは「脱炭素社会」「循環型社会」の実現をキーワードにしています。具体的には「空間制御ソリューション」「モビリティサービス」「廃プラ循環ソリューション」の3本柱に、プラスアルファで再生可能エネルギーを加えた4つのテーマで開発、事業化に取り組んでいます。 事業内容としては、開発から販売まですべての機能を持っており、販売に関しては、事業部内では販売準備までですが、グループ会社であるリコージャパン株式会社と密接に連携して販売を担ってもらっています。 大きい目標としては、環境、エネルギー、そしてBCP(Business Continuity Plan。災害等緊急事態下における事業継続計画)含めて、リコーのバリューを高めること。環境といえばリコー、BCPといえばリコーと言われるようになることを目指しています。 ――どのような社会的価値の創出、社会課題解決を目指しているのでしょうか。商品やサービスの内容とともに教えて下さい。 空間制御ソリューションでは、オフィス内の温湿度、照度、人の有無をセンシングし、適切な環境を提供する「RICOH Smart MES」を開発、2020年10月から販売を開始しました。これは、オフィス内の環境を最適に制御し、省エネルギーを実現するものですが、同時に働く人の快適性と利便性も実現するものです。他社にはない特徴として調色・調光の機能があり、さらに働く人の状態計測や温度湿度照度以外の環境情報の計測などの機能も実装していこうと計画しています。 モビリティサービスでは、EVの普及に備えた事業の探索・開発に取り組んでいますが、現在は社有車の運行管理システムを開発しています。多くの企業で社有車の管理はいまだに紙台帳にとどまっていますが、これをデジタル化し、利用者に簡便に登録できるような運行管理システムの実現を図ります。 廃プラ関連では、ハンディタイプの「樹脂判別センサー」を開発しており、2022年から販売する予定です。リサイクル用のマークがついていないプラスチック製品は判別が難しく、例えばおもちゃなどの部品で使われているようなものは、樹脂種類がまったく分からないことがあります。それを判別しマテリアルリサイクルに役立てようというもの。大きさはメガネケースほどのサイズで、本体は計測のみ行い、スマホとリンクして計測結果の表示、データの管理を行います。将来的には広範囲のデータマイニングなども行えるようにしていきたいと考えています。 ご存知のように海洋プラスチックをはじめ、廃プラは世界的にも問題となっています。また、これまで先進国では廃プラを輸出して中国などでリサイクルされていましたが、輸出が禁止され、国内で処理しなければならなくなります。これまで廃プラの種別判定は、高度に専門的な技能で、数千万円から億円単位の投資が必要な大規模なソーティングマシンが行うか、または一部の職人的な人しかできないものでしたが、ハンディセンサーがあれば、誰でもできるようになり、廃プラリサイクルを促進すると期待しています。まだ価格が高いため難しいですが、いずれは各家庭に1台あって、ゴミの分別にも役立てていただくのが夢ですね。 ――現在の事業センターはどのような課題感をお持ちでしょうか。また、どのようなスタートアップとご一緒したいとお考えでしょうか。 当センターとしての課題は、大きくは2つあると認識しています。 ひとつは、まだ「市場に出す→フィードバックを受ける→改良する」というフィードバックサイクルを高速に回せていないこと。モビリティサービス、樹脂判別センサーは上市していないためこれからとはなりますが、Smart MESの場合、コロナ禍の影響もあって発売したものの、導入に二の足を踏まれることがとても多く、フィードバックサイクルにまで至っていません。これをいかにして売れるようにするか?という問題が2つ目の課題につながります。 それが「強みを増やす」ということです。Smart MESは人感・温湿度・照度などのセンシングとオフィス全体のエネルギーマネジメントまで実現しますが、もうひとひねり、購入を促すような要素がほしい。例えば今、働く人の状態(バイタル情報や疲労度、ストレス、感情など)を計測をする技術を持ったスタートアップさんとの検討をはじめていますが、そのようなユニークな技術を導入して強みを増やすことに繋げていきたいと考えています。樹脂判別センサーも同様で、資源循環のビジネスを展開しているスタートアップと協業などの可能性検討をはじめました。 もともと、リコー、特に環境・エネルギー事業センターは開発とともに、良いものはどんどん取り入れて、一緒に販売していこうという姿勢で、これを「Make and Buy」と呼んでいます。シーズ段階の技術から、完成度の高い技術、サービスまで、幅広く受け入れたい。思いが一緒であれば、販売や営業部分のソリューションも大歓迎です。 環境ソリューションは、競合も多くある意味でレッドオーシャンです。また、顧客側の意識改革が必要であるなど、必ずしもニーズが確立していない問題もあります。Smart MESでは調光・調色機能など、リコーだけの技術やソリューションを提供して、市場を開拓していきたいと考えています。ぜひそこに乗ってくれるスタートアップさんにご応募いただきたいです。 ――スタートアップにはどのような支援を行いますか。 当センターとしては、御殿場市など自治体との包括連携協定を結んでおり、地域での実証実験などが行なえます。また、リコージャパンの販売網を活用できますので、私たちの商品やサービスに乗せて販売することもできますし、異なった販売方法も検討できると思います。いずれにしても、内容、ステージ次第でさまざまな支援が可能かと思います。 ――TRIBUSに対して、どのような期待を抱いているでしょうか。 これまでの経験上、面白い技術を持ったスタートアップさんは意外なほどに発信や交流の機会が控えめの印象があります。なので、面白い人たちほどなかなか出会えない。TRIBUSでは、あまり世間に出てこない、そういう方々と出会うことに期待しています。スタートアップさん側として、あまり情報をオープンにしたくないというお考えもあるかもしれませんが、TRIBUSでは、応募情報はオープンにされないので、その点は安心して応募いただけると思います。 実は、マッチングをする東京都の公的機関にも登録していて、そこで何社か面白い方々に出会うことができましたが、TRIBUSではそれ以上に面白い人に出会うことに期待しています。 TRIBUSのプログラム上では「採択」という形で数チームに絞られてしまいますが、正直言うと、採択される前のすべての皆さんにコンタクトしてみたい。今回は、こちらからもっと情報をお伝えして、引っ張り上げる機会を設けられればとも考えています。 ――最後にエントリーを考えているスタートアップに一言お願いします。 私たちは脱炭素社会、循環型社会の実現に向けて、ビジネスでその課題を解決したいと考えていますので、そのビジョンにご賛同いただける方、熱意を持って取り組んでいらっしゃる方とご一緒したいと考えています。まだ世に出ていない、知られていないと思う方はぜひ、エントリーしてください。 リバースピッチの動画はこちら▼



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