TRIBUS、採択から成果発表まで何してる?
他企業・他分野のプロと作る「新たなビジネス」の萌芽とは

2020年10月に開催された社内外統合ビジネスコンテスト(統合ピッチ)では、社内外から本年度のプログラムに参加する15チームが選出されました。採択チームは現在、リコーグループのリソースを活用しながらビジネスアイデアを深めている真っ只中。一方で、採択チームに対して支援を行う社内サポーターやカタリスト(スタートアップ企業とリコーグループ内部をつなぐ役目)たちも、新規事業立ち上げに関するノウハウや知見を自ら収集・勉強し、よりよい支援ができるよう日々励んでいます。

今回は、そんなTRIBUSのチャレンジャーやサポーター、カタリストはもちろん、TRIBUS参加者以外も自由に事業創造について学ぶことのできる参加型ワークショップの様子をレポートします。
TRIBUSが手がけるプロジェクトの分野は、リコーの既存事業にとどまらず多種多様。そのため今回ご紹介するワークショップも、他社と合同での開催や、他分野のトップランナーたちをゲストに迎えての開催となりました。



ビジネス創造の考え方とプロセスを学ぶwith KDDI


TRIBUSを主催するリコーは、同様に社内起業を推進しているKDDIと、社内起業プログラムに関する情報交換を行なっています。
1月21日には、両社から新規事業の立ち上げに関心のあるメンバーが集まり、それぞれの新規事業に関する知見を学び合うことを目的に、新規事業立ち上げの際のプロセスや考え方について共有し合う合同ワークショップが開催されました。

ファシリテーションを務めたのは、株式会社メンバーズでサービスデザインを手がける川田学氏と角銅浩平氏。KDDIとリコーから集まった文化やバックグラウンドの異なる個性豊かな参加者たちが、それぞれの興味関心を生かして事業ビジョンを構築しました。


▶︎テーマを超えて、普遍的な社会の動きを見つける

本ワークショップの宿題として、KDDI社員とリコー社員は、事前に興味関心のある記事をピックアップしてきています。

「まずは、今回宿題としてピックアップしていただいた記事を共有いただき、テーマやトピックを超えて見えてくる社会の動きを洞察していただきます。その後、そこから想像される未来を考えていただき、その未来について違和感やひっかかりを感じる点から、自分の考える理想の未来やビジョンを描いていただきます」(川田氏)



参加者はコラボレーションツール「miro」を使用しながら、オンライン上のホワイトボードに、各自でピックアップした記事を貼り付けていきます。テーマは技術、社会、政治、環境、経済、人の価値の6つ。

KDDIとリコーという会社柄からか、ホワイトボード上「技術」のテーマに記事が集中しつつも、出生数の減少による少子化問題やロボットを活用した働き方改革など大きな流れに関する記事から、3Dプリンターによる料理、健康状態を教えてくれる鏡、野球場の中のバーベキュー施設など、ユニークなサービスについての記事まで、多種多様な記事が紹介されていきました。




異なるカテゴリーから2つ以上記事をピックアップして共通点を見つけるプロセスでは、「すべてが『ついで』で済ませられるようになる」「サブスクリプションの形態をとっている」「個人にカスタマイズされている」「貨幣でないものの取引・交換が行われている」「有形から無形になっている」などの、サービスにおける社会的な流れが多く洞察されました。

その後、社会的な動きから未来を予想し、その未来に対して抱く違和感やひっかかりについて考えるプロセスを経て、参加者各自が自分のビジョンを発表します。


▶︎ビジョンは人に伝え、考え続けることが大事

ファシリテーターの川田氏は、ビジョンを発表する際に気をつけたいことについて、「ビジョンは、主観的に言い切ることが重要です。客観的に考えて現実味がなくても、とにかく言い切る。慣れるまではとても恥ずかしいと思いますが、自分が心から伝えたいと願い、自信を持って言い切れるようになった時が、事業のスタートになるでしょう」と話しました。




参加者からは、「働く時間を、サッカーや絵を描く時間に当てられるようにします」「材料だけ入れたら料理ができる世界を作ります」「バーチャルの自分が、苦手なことをすべてやってくれる世界を作ります」「一切ものを持たずにすむ世界を作ります」「ロボット執事が育児の負担を分担してくれる世界を作ります」など、多種多様な、ユニークで個性豊かなビジョンが語られました。

ワークショップを終えた参加者からは、「リコーとKDDI、バックグラウンドの違う人が集まっての議論が活発にできてよかった」「アイデアを広げても実現するのが苦手だったが、実現に至るまでのプロセスを学ぶことができた」「オンラインツールの利便性に驚きつつも、やはりアイデア出しはリアルで顔を突き合わせてやりたかった。コロナが収束したあとにまた機会があれば参加したい」などの声が聞かれました。

リコーとKDDIという、得意領域や興味関心の異なる参加者が集まったワークショップ。オンラインという物理的な制約がある中でも、各自がツールを使いこなし、お互いの話に真剣に耳を傾けることで、会社を超えて一体感が醸成されるイベントとなりました。


途上国の社会課題から事業創造を考えるwithコペルニク

 

1月28日と2月4日の2日間にわたって、リコーグループ社員を対象に、途上国の社会課題から事業創造を考えるワークショップが開催されました。講師を務めたのは、一般社団法人コペルニク・ジャパンの中村俊裕氏と天花寺宏美氏。

一般社団法人コペルニク・ジャパンは、いわゆる「ラストマイル」と呼ばれる途上国の最も支援が行き届きにくい地域において、解決策の開拓・検証・普及を行い人々の生活向上を支援しており、かねてより社会課題への取り組みでリコーと連携しています。

今回のワークショップでは、エネルギー、水、農業、保健衛生の4分野・トピックについて、インドネシアを中心とした途上国の課題を学んでいきました。本記事では、一部の講義とディスカッションの様子をレポートします。


▶︎TOPIC:水

水分野では、生活用水の汚染による健康被害の課題について説明がありました。

「途上国、特に農村部では、水道水が通っておらず、基本的には井戸を利用したり、地下水をポンプで汲み上げたりしています。しかし、場所によっては見るからに濁っていたり、透明でも実は大腸菌が大量に入っていたりする。そういうものを飲んで下痢を起こし、脱水症状から死亡にいたるケースが多くなっています」(中村氏)

この課題に対しては、約10年ほど前から、浄水器を用いた解決手法が出てきているそう。




「セラミックのフィルターが付いたもので、上から汲み上げた水を入れると、下に落ちる時には大腸菌などの有害物質が取り除かれています。この分野についても、多くの企業によって、バケツ1つで簡単に素早く浄水できるものから、フィルターが3つ付いている大家族用の浄水器まで、さまざまな製品が開発されています」

他にも、セラミックのフィルターでなく、より安価な紙のフィルターを使用した浄水器や浄水ビジネスを行う事業者向けの非常に大きな浄水器、太陽光によって海水を淡水化する装置なども紹介されました。




参加者の中には、水が汚れているとどのような健康被害があるのかについての理解を促すべきとの考えから、「子供に対して水質汚染に関する絵本を作成し、販売する」「子供と一緒に浄水槽を作る」といったアイデアを提案される方も。

他にも、水を汲む労力や負荷を軽減させる目的で、「ヤギや台車を使って水を運ぶ方法を確立させる」「綺麗な水がどこにあるかを探索できるドローンを提供する」などの提案もありました。水質汚染にとどまらず、広く水分野において発想を広げている点が印象的でした。


▶︎TOPIC:農業

農業分野では、穀物の収穫や脱穀作業などがすべて手作業で行われており、道具を使っていてもせいぜいナタや鍬、バケツという地域が多い現状について紹介。また収穫物の乾燥プロセスにおいても、課題が見られるといいます。




「海藻やコーヒー豆などは、乾燥させるプロセスがとても重要な商品。途中で砂が混じったり、雨が降って濡れたりしてしまうと、取引の際に高く売れなくなってしまいます。手作業が中心の途上国では、労力を割いて作っても対価が低くなってしまっているのが現状です」(中村氏)

この課題に対しては、コペルニク自ら、「ソーラードライヤー」という装置を開発したといいます。




「乾燥プロセスにおける労力を軽減する狙いで、乾燥において重要な、『太陽熱を外に逃さない』『雨に濡れない』『一定の湿度内で乾燥させる』といったことを徹底できる装置を開発しました。実際にカシューナッツやコーヒー、カカオ、ココナッツ、海藻など、多くの農作物において乾燥が早まるなどの効果が見られました」(中村氏)

しかしこのケースは、農家の負荷は軽減したものの、販売価格を上げることはできなかったそう。そこで、乾燥プロセスを評価してくれる買い手へ販路を変更したり、乾燥させる前の工程を工夫するなどの実験を行ったといいます。




「もともとコーヒー豆は皮を付けたまま天日干しさせていたのですが、皮を剥いてタネを出してから乾燥させるハニープロセスを取り入れ、プレミアムコーヒーに詳しい買い手に値をつけてもらうようにしました。するともともと1キロあたり150円だった買値を250円にまで向上させることができました」(中村氏)

これに対し参加者からは、「様々な地域の湿度や温度を計測し、ソーラードライヤーを適切な場所に設置できるようにすると良いのではないか」と、ソーラードライヤーの取り組みをさらに加速させるような提案や、「乾燥している豆とそうでない豆を飲み比べる試飲会を行い、買い手に品質の違いを理解してもらってはどうか」といった、需要から転換させる試みなどの提案がありました。




他にも、農村地域の情報格差に課題感を見つけた参加者からは、「政府関係者と農家をつなぐアプリを作ることで各農村地域の情報格差をなくし、農家間で競争が生まれるようにすると良いのでは」といったアイデアもあり、コペルニクも実際に取り組む農業分野への関心の高さが伺えました。

コペルニクのおふたりからの講義後、全体で社会課題への取り組み方について議論したディスカッションでは、「利益がでるからこそ、持続可能な発展になる」「支援といっているだけではダメで、当事者の人たちが自分たちで運営できるようになることがゴール」「日本型をそのままもっていっても意味がない。現地にあったやり方を模索しないといけない」などの多くの意見が参加者から寄せられました。

かねてより社会課題への取り組みでリコーと連携しているコペルニクのおふたりが講師を務めたこともあり、終始和やかなムードで進んだ2日間のワークショップ。新興国支援を本業とする参加者も見られ、ビジネスサイドから現実的なラインを探りつつも、真剣に途上国の課題解決に向けて議論を交わすリコーグループ社員の姿が非常に印象的でした。


多分野のトップランナーから事業創造を学ぶ

この他にもTRIBUSでは、リコーグループ社員に事業立ち上げを身近に感じてもらうため、各分野の起業家を招き、起業にいたったきっかけなどを伺うトークイベントを開催しています。

1月19日にオンライン登壇したのは、アクセンチュアを経てウガンダでバイク宅配事業CourieMate(クーリエメイト)を起業、2020年にYAMAHA発動機に事業譲渡を行なった伊藤淳氏。




伊藤氏は、新規事業を起こす際には「あえて事業計画を作らないようにしていた」と話します。

「最初にたてた仮説は、大抵上手く行かないものです。それにもかかわらず、多くの企業では事業計画の策定にかなりの時間を割いています。新規事業の肝は、試行錯誤を繰り返して正解にたどり着くこと。事業計画を作り込んでしまう前にどんどん試して、ダメなら方向転換するといったことを繰り返さなければなりません」(伊藤氏)

参加者からは、「サラリーマンになれると計画重視になってしまうが、完璧な状態でなくてもdoするにはどうしたらいいか」という質問がありました。

「大事なのは、クオリティよりもニーズを捉えているかどうか。クオリティが低くても、お客さんのニーズを捉えるための試行錯誤は繰り返した方がよいですし、クオリティが高くてもニーズを捉えられていないのであれば、早くお客さんにぶつけてフィードバックをもらった方が良いと思います」(伊藤氏)


▶︎イノベーションに必要な組織の多様性とは?

1月26日にオンライン登壇したのは、メディアアーティストであり、ニコニコ学会β生みの親でもある江渡浩一郎氏。数々の事業や場を立ち上げてきた氏は、新規事業の成功には「組織の多様性」が重要であると話します。




「多様性と一口にいっても、年齢や性別、性格、専門領域など、色々あると思います。その中で最も重要視すべきなのは、各メンバーの専門性が高いこと。『とりあえず若い人をいれれば何か新しいことができる』といった発想では、いつまで経ってもブレークスルーできません」(江渡氏)

参加者からの「持続可能な事業にするために気をつけていることはあるか」という質問に対しては、「やはり、事業を進めるメンバーの組み合わせは非常に重要です。僕が新規事業にかかわる際にはいつも、突拍子もないことを言い出すイノベーターと実務をこなす人の組み合わせを探します。最初は誰にも信用されないようなクレイジーなアイデアでも、組み合わせの妙によっては誰もがあっと驚くサービスにスケールすることがあります」(江渡氏)


▶︎独立起業と企業内起業でそれぞれ異なる必要スキルとは?

2月9日には、デザイナー兼エンジニア兼ストラテジストであり、スマホ決済サービスCoineyの生みの親であるtsug,LLC代表取締役の久下玄氏より、新規事業を立ち上げる際に気をつけるべきことについて、お話をいただきました。




スタートアップの創業を経験し、クライアントの新規事業や事業再生なども手がける久下氏は、独立起業と企業内起業では、求められるスキルが異なると話します。

「独立起業は予算がない分、スピーディーにサービスを実装する能力がものをいいます。また生活リスクが高いですが、その分意思決定スピードが速い。それに対し企業内起業では、企画が通れば初期の資金調達はしやすいが新規事業と既存事業のカニバリなどを上手く説明し、社内を調整するスキルが必要になります。生活リスクは低く、人的リソースは潤沢ですが、その分意思決定のスピードは遅くなる。起業する際には、こういった一長一短を考える必要があるでしょう」(久下氏)

参加者からの「リコーのような企業が勝てる分野はどこか」という質問に対しては、「大企業の強みは、お金・信用・商流の3つだと思っています。リコーさんであれば、強みであるプリント技術・事業に関連・転用する分野で新規事業をすると、優位に事業を進められると思います」と話しました。

他分野から、多様なゲストを迎えて開催される「TRIBUSらぼ」。分野もバックグラウンドも働き方もさまざまなゲストの講演からは、事業開発や起業など、新たな挑戦を後押しするたくさんのヒントが得られました。

TRIBUSでは、プログラム参加の有無に関わらず、これから事業にチャレンジしたいと考えている社員や、事業支援・サポートに興味のある社員に対しても、ワークショップなどの形で学べる機会を提供しています。こうした環境をフル活用し、ビジネスアイデアを深める採択チームやサポーター、リコーグループ社員の今後に乞うご期待です。




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