今、動きたい人求む!コミュニケーション革新と10年後の未来を創るために

第5世代移動通信システム「5G」が試験運用を経て一部地域でサービスの提供が始まった。今回のリバースピッチは、この5Gをテーマに掲げるFuture Generation Project Team(FGPT)が登場。5Gは10年に一度のコミュニケーション革新であり、「今、ここ」で動き出さなければ、次の時代を築くことはできない――5Gをお題目には掲げるが、見据えているのはその向こうにある未来の社会だ。リコーにとってメインストリームである技術出身者がリーダーを務めるプロジェクトチームだけに話も早ければその後の動きも際立って速い。コミュニケーション関連の技術を持つ人ならウェルカム。「すぐ、動く人を」というメッセージは、技術者としての焦りであり本音なのかもしれない。「5G」という言葉にとらわれる必要はない。通信とコミュニケーション関連のスタートアップはマストチェック。

■ FGPTが求めるもの

  • すでに具現化に向いて動いているスタートアップ。
  • 10年後の未来に向けて共に動ける人。

■FGPTが提供できるもの

  • リコーグループのリソースはもちろん。
  • ステージ、技術内容等に応じて、実験から商用化まで、具体的なサポートと協業体制。

■ こんな人・企業の応募を待ってます

  • コミュニケーションに関連ありそうかな?と思う人。
  • 自分たちの技術、ビジネスが社会に対してどのような意義があるか自覚的な人。


技術経営センター FGPT リーダー 田中諭

FGPT(Future Generation Project Team)とは

――FGPTとはどのようなプロジェクトチームなのでしょうか。

世界的に5Gが始まりかけたタイミングで、社長山下の肝煎りで発足したプロジェクトです。5Gによる社会変化は大きいだろう、そこではリコーが提供する社会的価値もまた大きく変わるはず。その環境変化に対し、リコーグループ全体がやっていくべきことを横断的に考え、行動に移すのが狙いでした。開発系トップのCTO坂田の元で、僕ともうひとりの2名体制で、2019年4月に発足しました。

僕自身は入社以来複合機のエレキユニットの設計・開発に携わる技術者だったのですが、新しいプロジェクトをやるから開発系から誰か出してほしいとなったときに、そこまで組織に紐付いてなくて、ふわふわして柔軟性があるようにみえたので選ばれたのかも(笑)。後日送り出してくださった上司の方からは、「期待してるよ!」と言っていただきましたが、当初は不安でしたね。PTもそうでしたが、急に自分がいなくなって元居たところやテーマは大丈夫なのだろうかとか。でも、フタを開けてみると何のことはない、回っていくんですよね。組織ってすごいなと思う反面、一人の力って、あ、これは自分の場合はかもですが、大したことないなと感じました。とはいえ、青天の霹靂であることは間違いなかったですが。

着任して最初にやったのは、社内のあちこちの5Gに関連のありそうなメンバーのヒアリングですね。最初の3カ月で社内外100名くらいに突撃取材をして、まずはグループ内の状況を把握しました。そして、そこで分かったのは、みんなそれぞれに進めているので、リコーグループとして5Gをどうとらえるか、活用していくのかが見えてこないということで、ここは山下さんの認識と同じようだな、と感じました。

FGPTの活動でもうひとつ軸というかきっかけになったのが、今年の経営方針でも出てきた「“はたらく”に歓びを」です。

昨年、次の20次中計(中期経営計画)骨子を考える活動に呼ばれた時、ちょうどFGPTでは「働き方」の変化について考えていたところでした。そこで偶然『働く幸せ』(大山泰弘著・WAVE出版 2009年)という本に出会い、「これだ!」と思い、次の週にたまたま、山下さんと会話する機会があり、今思えば生意気でしたが、勢いでこの本を勧めました。その後、働くことを通して得られるよろこびを追求していくことが、リコーの次の100年に取り組むべきことではないかな、ということを、少しずつ意識するようになりました。これを受けて、FGPTでも、5Gを中心に「通信がより良く、より速くなる」ということを考えていたのですが、その先にある「働く」ことの意義、意味というところにも踏み込もうということになりました。

2019年上半期は調査からコンセプトの立ち上げ、アイデアの積み上げをしてきましたが、報告したら「2人じゃさすがに足りないだろう」となり、兼務や社内副業制度を活用して増員を図り、本務4名、兼務/副業メンバー10名ほどの体制になりました。

コミュニケーション革新の夢を描く場所に

――今回の募集に掲げた「5G時代の対面/遠隔コミュニケーション革新」について教えて下さい。

5Gという、10年に1度のコミュニケーション革新を前提としたときに、どんな社会になるのか、そこではどのようなコミュニケーションが生まれ、働き方や暮らし方が変わるのか、という問いが中心にあります。そんなことばかり言っていたらたまに、5GのPTなのに5Gのことが全然出てこないよ、と言われることがありました。ですが、通信はあくまで手段なので、分かりやすく説明するために象徴的に利用していた、というところはありますね。

例えば5Gが浸透した社会では、オンラインが前提になった世界になるかもしれません。そうなるとリアル/オフラインというのは、狙いすました状態で希少価値が上がり、オンラインで使うツールがそのまま利用されるような混ざり合った状況になるかもしれません。つまり、デジタルによってリアルも拡張される感覚というか。

例えば、いっぺんにたくさんの人と出会ったときなんか、さすがに覚えきれなくなってきます。それがTeamsなどのオンラインツールで会議していると、顔の下に名前が表示されていて、カーソル合わせると部署名とか情報まで見えちゃう。すごく便利ですよね。それがリアルでも見えるとありがたいと思いませんか? また、話をしていても、「何言ってるか分からないよ」、これは自分が相手からよく言われるのですが、というときも、もし対面してたら身振り手振りやホワイトボードに考えていることを図で書き示すとかで説明することがあると思いますが、オンラインだとそのままはしづらいけど、代わりにwebとか資料の画面共有できるから正確さや情報量が多くなって便利ですよね。これがリアルでもできたら最高だな、と。さらに、音声中心のリモートワークになって、人と話すのが苦手な人と得意な人でコミュニケーションに差が生まれてくることもあると思うのですが、その解決を考えることも新たな社会課題といえるでしょう。そうやって今オンライン/デジタルで便利になることで、新たなものも含めて不満や困っていることを解決できれば、みんなに対して役に立つチャンスかもしれません。

つまり、オンライン前提になり、オフラインでもオンラインツールが活用されて、豊かで齟齬のないコミュニケーションが可能になり、仕事の生産性も高まることにつながるのではないか、ということなんです。

(先日実施したオンラインでの)スタートアップ向けリバースピッチでは、「コミュニケーションアシスタ」「スーパートランスレータ」などのコンセプトとして、音声リアルタイム字幕、思考のインスタンス化、ニュアンス補助といった、自分があったらいいな、という機能案を紹介しましたが、これはあくまでも分かりやすい一例であって、もっとさまざまな可能性があるだろうと思っています。要は心地よく、効果的なコミュニケーションができたら、という願望から生まれているものです。

――内容が広く、分かりにくいところもあるように思います。

あまり限定せずに、いろんな人が、自分なりの解釈で臨むきっかけになればという思いがあります。もう少し現存するイメージで言うと、遠隔だけでなく対面でも機能する、例えば補聴器やメガネみたいなものでもいいんですが、あまり話しすぎて、イメージを固定してしまうと良くないかなと。

働き方に絡めて言うと、この先通信環境はもちろん、AIやロボットなどが普及し、人の働き方が変わるというときに、人間にしかできないことが求められるようになるという点も外せないですね。やらなくていいことをテクノロジーに任せて、人は人にしかできない、やるべきことをやる。その時にリコーの提供するものも、見せ方も変えていかなければならないでしょう。その課題を、照度の高いコミュニケーションにフォーカスして進めたいんです。

オンライン、オフライン問わず、人と人のコミュニケーションをフィールドに思う人なら、関わりのある領域だと思います。コミュニケーションの本質に関わる部分を考えて、こういうのって関係ある?という問いかけをいただければありがたいです。

通信技術はこれまでおよそ10年に1度くらいのペースで世代交代して、そしてその10年かけて徐々に浸透し、結果的に大きな変革を起こしていて、インフラの変化が広がり、それに伴って新しいコミュニケーション、新しい文化が生まれるということを繰り返しています。例えばポケベルが独自の表現を生み出して若者に広まることから、世相を反映した文化や流行を生み出し、そしてまた新しいものに移り変わり、良いものだけが残っていく。

5Gの通信革新でいったい何が起こるのか、それを最初から決めてしまうことはできないでしょう。今どの企業でも『すごく速くなる』『たくさん繋がる』『遅延が少ない』ということから言い始めているが、具体的に何?となると意外とバシッと来るものはみつけにくい、そういう時期かも。だから僕らも、5Gの通信革新で起こることをこうと決めずに、広く受け止めて、未来の妄想を描く場所にしたいと思っています。

TRIBUSは「きっかけ」に

――なぜTRIBUSで募集しようと思ったのでしょうか。

TRIBUSの前身を会社に提案した方とは長期の研修でご一緒していて、なんとなく状況は聞いていて「面白そうっすね!」と話したりしてはいたんです。今までになかったことを始め、盛り上げ、継続させているのはすごいことだなぁと。自分も含めリコー社員は新しいことに対して必ずしも積極的なわけではなく、どう関わっていいか分からないから距離を取るという空気感も強いと思うんですが、そういう空気感にもめげずに続け、しかも会社に変化をもたらしつつある。すごいことです。事務局メンバーには『続けてくれて、ありがとうございます!』という気持ちしかない(笑)。

そんなTRIBUSを見て思ったのは、一芸に秀でた人、いろいろな技術を使う人が集まっているな、ということ。それはFGPTが必要とするもの、そして逆に、そんな方々にピッタリ来るのがFGPTかもしれないな、と思いました。

確かにFGPTが取り組んでいることは、ぼんやりとした抽象度の高いことで、その実現に至る手段はひとつじゃないだろうと思うんですね。そうするとリコー社内のエンジニアや企画メンバーだけでは限界があるし、広くいろんな人が考えていることを取り入れ、外の力を借り、叡智を集めると、何か気づけなかったことに気づけてみたりするのではないか、と。そもそも5Gだって1社だけでなんとかなるものではなく、途方もなくお金がかかるというのもありますが、ここは、普段たまにお話させてもらっている通信キャリアさんたちの多大なご苦労があってのことなので、我々もそのお手伝いができないかな、とは思っています。

――エントリーするスタートアップに提供できるものは何でしょうか。

リコーグループ全体のリソースとして、国内3万人の従業員、100万社におよぶ顧客基盤への接続機会は提供できます。つまり即現場で使えますよと。

その一方で、FGPTとしては具体的に「これ」というものは用意していません。逆にいえば、状況次第でいろいろな対応が可能です。例えば、FGPTではすでに社内外のベンチャーやチームと開発を進めていたりしているので、ステージによっては一緒に開発する体制はすぐにでも作れる可能性があります。

――どんな人、スタートアップを求めていますか。

素早く独創して動きたいという思いもあるので、こんなプランを開発していて動けますよという人はありがたいですね。速く手を動かして結果がほしいとか、ハンズオンされてますとか、そういうのもいい。

エントリーしてくる方からお聞きしたいのは、(リバースピッチで述べた)この10年に一度の通信変革のタイミングに、このような立場で居合わせたのは、何かの「啓示かも!」みたいなものです。
「10年に一度の通信変革、かつ、コロナ禍はじめ未曾有の社会変容、このタイミングは啓示かもしれません! TRIBUSを活用して、社会・世界を救うというのはいかがでしょうか。」と呼びかけました。つまり、皆さんが手元でやっていることが何なのか、社会に対してどんな意義、意味があるのかなどをお話しいただけたらうれしいですね。そして、それに対して、どうビジネス化したいのか、スケールしたいのかという展望や野望をお聞きして勉強させてもらい、ぜひとも自分の甘いところも認識したいというか。

とはいえ僕らのポジションはまだまだ駆け出しもいいとこなので、スタートアップの皆さんにはご相談させていただくという姿勢で臨んでいます。『共創』『連携』と言葉で言うのは簡単ですが、腹落ちするところまで話し合って、お互いにリスペクトしあい、一緒に成長していけるような関係を築けたらいいな、と考えています。

――TRIBUS、そしてFGPTを通しての期待や展望をお聞かせください。

今後10年掛けて5Gを浸透させていく中で、手を動かし、社会に実装させ、インテグレーションするというサイクルを回していかなければ、10年後に何も良いものは生まれていないだろうし、社会は変わっていないと思います。だから、今、このタイミングで動き出さなければならないし、それは一人じゃなく、多くの人が動き出すことが必要なんだと思います。

なので、このTRIBUSも5Gに向けて動き出すきっかけ、チャンスだと思います。僕らも、とにかく手を動かし、止まってしまわないように常に動き回っているので、タイミングが合うようでしたらぜひエントリーしてくださいましたら幸いです。よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

TEXT BY Toshiyuki TSUCHIYA




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