TRIBUSが育むのはビジネスアイデアだけではない。 人とつながり、成長を促す現場としてのアクセラレータープログラムへ。

社内外を大々的に巻き込んでスタートした「リコーアクセラレータープログラム2019」も、2月20日のInvestors Day(成果発表会)で一区切りがついた。しかし、成果発表会に登壇したスタートアップ、社内チームにとってこれはもちろんゴールではない。チームによっては本格的なビジネス化に向けた取り組みをスタートしたり、ビジネスとしての運用を開始したり、かと思えば、まだまだ生煮えのシードアイデアレベルで今後さらに料理が必要だったりと、そのステージはさまざまだが、本格的なビジネス化を目指し今後も活動を継続していくことに変わりはない。今回は、そんなチームのひとつ、ファッションを通じてサステナブルな社会の実現を目指す「MEDETASHI」の代表の植田優哉氏、カタリストとして植田氏と活動を共にした3名のカタリストの皆さんにお話を伺う。ここまでたどり着くには、さまざまな苦労もあっただろう。また、新しい取り組みだけに得るものも多かったはずだ。彼らのエピソードから、リコーアクセラレータープログラム改め「TRIBUS」の将来を展望してみたい。

【スタートアップ】 MEDETASHI代表 植田優哉氏 【カタリスト】 株式会社リコー 環境エネルギー事業センター 曽我浩史 株式会社リコー ヘルスケア事業本部 三谷悠貴 リコーITソリューションズ株式会社 経営戦略本部 宮下正博

新しいものが生まれる変化の現場へ

――まず、2019年度のプログラムに参加した理由、きっかけを教えて下さい。

植田優哉氏「前職の組織コンサルタントで実施していた、新規事業創出プログラムにリコーの皆さんにご参加いただいていたことが遠因となっています。このプログラム期間は半年、さまざまな業種の方が集まっており、異業種交流会の様な側面もありました。私は講師を務めていたのですが、リコーの皆さんとは不思議と意気投合し、親しくなりました。

一方で、私個人としては、自分が新規事業開発をやっていないのに新規事業創出のコンサルをやっているのはおかしいと思うようになっていて、2019年1月に独立し、フリーのコンサルタントとして活動する一方で、ビジネスアイデアを練って、コンテストやプログラムにエントリーするようになりました。

リコーの皆さんとはフリーになってからも親しくしてもらっていたのですが、私の活動を知った方がリコーアクセラレータープログラムを紹介してくれて、『植田さんが出たらめちゃくちゃ面白くなるよ!』と、エントリーすることを勧めてくれたんです」

曽我浩史「私の場合は、本業では知ることのできない、何か新しいものから刺激を受けたいという思いからカタリストに手を挙げました。いや、カタリストがどんなものかも分かっていなかったくらいなんですが(笑)。

私がリコーの本業で携わっていたのは『事業を終了』させるという業務。新しい事業を立ち上げるのとはまったくの逆のポジションですね。また、リコーの主流であるコピー機、プリンターの業務とも毛色が違うし、

現在の部署での仕事を終えた後にどうなるのかということに、不安もありました。何よりも自分の仕事が世に出せない、というのがストレスだったんだと思います。

それで、どんなスタートアップの方とつながるか分かりませんでしたが、とにかく直接接点を持って、刺激を受けたいなと思ったんです。

正直、個人的にはかなり思い切ったチャレンジでした。しかし、新しい事業を作り出して、それが育っていく現場を見てみたいという気持ちが強かったです。実際やってみたら、どんなことになるのかまったく分からない中で、もがくことになったんですけど(笑)」

宮下正博「私はカタリストという役割をやってみたかったというのが理由です。社外向けの説明会があったときに、事務局の方からカタリストのことを教えてもらい、面白そうだなと。『やりたいようにやってくれていいから』と言うので、社外のチームを支えながらも、自分からもアイデアを出したりするような伴走の仕方ができればいいなと思いました。

というのも、実は社内向けにアクセラレータープログラムの募集が始まったときに私も社内チームとして応募していたんです。残念ながら最後まで残ることはできませんでしたが。しかしその後、私自身がそもそも、スタートアップがアイデアを事業化するプロセスを知らないなと気付いたんですよ。だからそれを体験してみたいと思った。カタリストとしてシードのアイデアを持っているチームと一緒に活動したら、それを一通り体験できるじゃないですか。社内チームのサポートをするという手もあったんですが、社外のチームとやるほうが、体験できる幅が広そうですよね。そこに期待して参加したわけです。

特にアイデアの根底にある内発的動機というものを形にしていくことに、なんとも言えない『楽しさ』があるとも感じています。自分の内発的動機から始まったやりたいことが、社会課題解決ビジネスにつながるかもしれないということ。自分のこれまでの人生で培ってきた経験や知識の集大成として、それを実現できたらこんな幸せなことはないと思うんですよね」

三谷悠貴「僕も宮下さんと同じで、社内向けアクセラレータープログラムに応募して途中で落ちちゃったクチです。へこんでいる時に、カタリストをやってみないか?と声を掛けられたのがきっかけです。次の年にもチャレンジする機会があるとは思っていて、次のために準備をするために時間を使うかすごく迷ったんですが、カタリストとしてサポートを通じて学べることがあるのではないかなと思い、カタリストになることを決めました。

そもそもエントリーした理由は、入社時に『新しい事業を創出する能力を身に着けよう』と決めていたからなんです。このプログラムは理想的ではあったんですが、エントリーしてみたら、自分が新規事業やビジネスを創出することの何も分かっていないことにも気付かされてしまいました。カタリストとして、スタートアップの活動の一連を手伝わせて頂くことで学び、次回エントリーに活かすのが狙いです。

リコーという会社自体、新しい事業を作るのがうまいイメージがあまりなかったじゃないですか。僕はまったく正解のないほうへ行きたいタイプだったし、リコーという会社が変わろうとしていることを感じたので、深く関わりたいと思いました」

シードアイデアを他人事にしない本当の「仲間」

――2019年10月の統合ピッチコンテストから2月の成果発表会まで、どんな活動をされてきたのでしょうか。

植田「実は、10月の統合ピッチコンテストから2月の成果発表会まで、3回ほどピボットして内容が変わってきています。応募から統合ピッチコンテストまでは、『タビフク』という、旅に出た際に服をレンタルするサービスの提案でした。これは、海外旅行に行く人が、安い服を着ていって、最後は現地で服を捨てて、空いたスペースにお土産を詰めて帰ってくるという話を聞いたことがきっかけです。私自身は2014年頃から、世界的な潮流となり始めていたSDGsを学んでいたので、これを聞いたときに、現地で服のストックを持っておいて、レンタルサービスを展開すればサステナブルな事業になるに違いないと思ったんです。『エアークローゼット』(衣服のサブスクリプションレンタルサービス。ファッションテックの走りと言われた)の海外版みたいなイメージですね。

これを統合ピッチコンテストで発表した際に、(リコーの)山下社長から、『国内でやったらどうか』とアドバイスをいただいて、次に考えたのが、出張者向けのワイシャツレンタルサービスです。確かにタビフクだと世界中にストックを持たねばならず、それは果たしてサステナブルなのかという疑問もあったので、それもありだなと。それで、最初のBtoCのタビフクから、ここでBtoBのサービスに踏み変えました。また、ワイシャツを通じて世界的な問題になっているコットンの問題にも切り込みたいという狙いもありました。

その後、3つ目のアイデア『和服の再生事業』を経て、最終的に消費者の行動を変えるには、エシカルな考えだけではダメで、『ときめき』を伴うアプローチが必要だということが見えてきて、成果発表会で発表した古民家におけるコミュニティ創出というアイデアに至ったわけです。カタリストの皆さんには、ピボットのたびにご尽力いただいて、リコー社内の皆さんへのインタビュー、アンケート調査に協力してもらいました」

曽我「最初に植田さんにお会いしてお話しを伺った時に、『ファッションでサステナブルな社会を目指す』という思いがあることだけは分かったんですが、ファッション業界とは関わりのない生き方をしていたので、その具体的なイメージが分からなかった。だから、最初に植田さんと2人で渋谷のファッションとサステナブルのイベントに出掛けたんですよね。これは私にとっては新鮮な体験で、とても勉強になりました。

カタリスト3人のうち、私がMEDETASHIのメイン担当で、宮下さん、三谷さんはサブというポジションでご担当いただきました。タビフクからワイシャツのレンタルサービスに変わったときに、リコーグループを顧客としたBtoBサービスを想定して、社内のサポーター向けにアンケート調査を実施したり、インタビュー相手を選び出したり、セッティングしたり。そういう仕事が主な業務でした」

宮下「私は、割と軽くタッチしていた感じです。ミーティングやインタビューの現場に参加して、植田さんの想っている方向に進んでいるのかどうか、また、誤解なく聞き出しているかを見たり、私なりの意見や考え――それは必ずしも植田さんのお考えとは同じものではないこともあったのですが、違う観点からの意見を言わせていただいたりしていました」

三谷「僕は、こういう言い方が良いのかどうか分かりませんが『批評的』な立場から関わっていた形だったと思います。あれ、年末でしたっけ? 2回目のピボットをしたのって」

植田「そうだったと思います」

三谷「あの時、僕が言ったのが、『気持ちは分かるけど、課題に対するソリューションになっていない』ということだったんですよね。それを聞いて植田さんが、年明けに次のプランに切り替えてきていたんだけど、これ、結論から言うとやり方を間違えていたと思うんです。

僕はあの時、課題ベースで考えてしまったんです。でも、植田さんがやりたいことは、『ファッションを通してサステナブルな社会を実現する』ということであって、目の前の課題ベースで考えてはいけなかった。まず植田さんの思いに沿って考えるべきだったなと思ったんです」

植田「いや、あれは本当にありがたかったんですよ。カタリストの皆さんとご一緒できて何が一番良かったのかというと、いい意味で忌憚のない意見を、ストレートに言ってくれるということ。誤解を恐れずに言うと、僕の思いが伝わらないときに『分からない』とちゃんと言ってくれる。つまり、これは、僕が考えていることがこれでは伝わらないんだということを気づかせてくれるわけですよね。

僕にとって、カタリストの皆さんは『サポーター』という感じじゃなかった。むしろ『仲間』。インタビューのときも一緒にいてくれて、いろいろな意見を言ってくれるし、本当にMEDETASHIの事業をなんとかしようと思ってくれているのが手に取るように分かった。本当にありがたかったです」

――伺うに相当なご苦労などもあったのではないでしょうか。

曽我「苦労というのはなかったかな。心がけていたのは植田さんのおっしゃることを理解しようということ。とはいえ、おっしゃることは分かっても、植田さんのスピードがとにかく速くて、それについていくのが大変だったというのはあります」

宮下「私自身はあまり苦労したということはなくて、ただ、曽我さんがいろいろと悩んだり迷ったりしているのを、横から見て『大変そうだなあ』と(笑)。結果的に曽我さんのサポートをしていましたよね」

曽我「そうでしたね。ありがとうございます」

三谷「僕の場合は、苦労というよりも、成果発表会間際になるまで、植田さんが本当にやりたいことをうまく理解できていなかったのが残念というか、もったいなかったというか、そういう思いです。新規事業でピボットするのはよくあることだとは思っていましたが、最後のビジネスに移行した理由が、なぜなのかずっとよく分からないままでした。『そういう仕組みを作ることが、やりたいことなんだ』と、論理で考えてしまっていたんですが、成果発表会の2週間前になって、本当にやりたいことは『ファッションを利用する人の意識を変えること』だったんだ!と分かって。あー! 失敗した!と。気付くのが遅かったです(苦笑)」

カタリストは「人の為ならず」

――逆に楽しかったこと、得た気付きなどはありましたか。

曽我「楽しかったのは植田さんと活動したこと自体ですね。魅力的な方なので、一緒にいるだけで本当に楽しい。普段の生活では絶対に足を踏み入れないところに行ったりしたのも楽しい経験でした。 あとは、社内にも企画部門があって、製品に対する要求仕様を提案してきますが、彼らも植田さんのようにいろいろ考えて苦労して、企画を考えていたんだろうなあと、想像するのも楽しかった。もちろん、社内の企画部門は、植田さんみたいに、『分からない』と伝えても後戻りのできないウォーターフォール型のプロセスで開発を進めていたので、一度決めたことは頑として変えないんですけどね」

宮下「今回統合ピッチコンテストで選出された8つの社外チームのうち、植田さんのMEDETASHIは、スタートアップとしてはもっとも若い、シードアイデアのステージだったんですよ。プロダクトやサービスがまだ無くそこからどうやってやりたいことを具体化して、進めるのか?という本当のスタートの部分ですよね。そこに関われたのは本当に良かった。どうやって具体化して、これで行けると進めていくのか。あとは、植田さんのプログラム参加前から続いているチームの中で起きていることも、植田さんを通して拝見することができたというのも良い経験で。成果発表会1カ月前の合同ミーティングのときって、植田さん徹夜明けだったじゃないですか」

植田「そうでしたね」

宮下「月1開催のプログラム参加13チーム全体でのミーティングだったんですけど、そこで植田さんがチームメンバーの方々と朝方まで話していたピボット中の苦しい状況を話してくれた。そして、『今から帰ってまたメンバーと検討することになりました!』と。外は暗くなってましたけど。すごいエネルギーですよ、ほんとに。

その後植田さんが、悩んだりしながら人間関係を広げて、『今度はこんなことをやることになったんですよ』と、息を吹き返したように話してくれる。そういう取り組みや変化を見られたのは良かったというか、私自身、楽しく、なるほどぉ、と思いました。」

三谷「僕は研究所でずっとやってきたので、論理でガチガチに固まった生き方をしてきたんですよね。例えば、論理的に考えると、植田さんが成果発表会でプレゼンテーションした内容で合っているのか?となるんですけど、直感的に考えると合ってるんですよ。そういう直感をすごく大事にした意思決定ができるというのはすごいなと思いました。これは開発者として学ぶべき点だと思います。

あとは、チームの人がそれに付いていってるのがすごい。最後、古民家のアイデアに行ったときに、これはチームから抜ける人いるんじゃないかなと思ったんですよ。だって、あまりにも大きく変わってるじゃないですか。でも、一人も抜けることなく付いていったんです。結束力あるチームですよね。こういうチームの絆を作るのはやっぱり人徳なんだろうなとも思いました」

――カタリストを通じて得た経験で、ご自身が変化したことはあるのではないですか。

三谷「そうですね。これまで開発の仕事では、課題ベースで論理的に考えることがほとんどでした。課題の仕組みはどうなっているのか、その解決法はなにか。要素を並べて、解決していく手段を考えるというやり方をやってきたわけです。しかし、それを逸脱するような(笑)、直感というやり方を知ってしまったので、結構論理的なやり方はひとつのベースとして残しつつ、直感的に解決策を探す、直感的な見方ができるようになりたいなと思いました」

宮下「私の場合、ひとつは、今度自分が新しいアイデアを持って、スタートアップのようにチームを組んで進めていく上で、役に立つ経験だったと思います。もちろんすべてのプロセスを体験できたわけではありませんが、いろいろな局面があって、さまざまなことが起こりうるということを体験できたことで、今後の取り組み方は変わると思います。

もうひとつは、社内の仕事や職場における観点ですね。スタートアップの仕事は新しいつながりが生まれ、課題も広がりを見せ、そこから新たな視点が立ち上がって、さらに新しい展開が生まれていくことがある。こうしたことは社内の仕事においても起こしたいことなんだと気付きました。普段から仕事の中にそうした視点を持ち込んで、発想を広げるようにしていけば、社内の仕事や職場もより可能性を広げられるのかなと思いました」

曽我「私個人としては、人との接し方。植田さんや、スタートアップの皆さんと接したことで、人との付き合い方は変わったと思うし、今後も変えていきたいところだと思っています。

組織としては、これはかなり難しいとは思うのですが、小回りの効くチームから始める、ということ。大きい会社ですし、何かに取り組むときには、大きく動こうとしてしまうのが、リコーの特徴だったと思うのですが、少ない人数で、小回りの効く形で始められたらと思うんです。三谷さんが言っていましたが、課題は何だというところから入って、ガチガチに固めて、方向転換も全然できないような大人数で進めていくのがリコーのプロジェクトの立ち上げ方なんですよ。植田さんを見ていて、もっと小さいチームで、課題を十分に咀嚼できていなかったとしても、動きながら方向修正ができるようなフットワークの良い小さなチームで始めるのがいいなと思いました」

再び未来へ。「TRIBUS」への期待

――今後の展望や、来年度の「TRIBUS」への期待などをお願いします。

植田「今後について話す前にまず、ここまでやってこれたことに、カタリストの皆さんに改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

私が目指しているのは『コミュニティ経済』『ファン経済』を通してサステナブルな社会を実現することです。ファン経済とは、『かっこいい!』という楽しみやときめきで人が動くことで回る経済の形で、ファッションはまさにその典型だと考えています。

コミュニティ経済も、ファッション業界のコアな部分のスタイルです。デザイナー、パタンナーという1~3人くらいのチームのクリエイティブに多くのファンが集まってコミュニティを最大化していく。そしてそれがリンクして増えていく――というのが日本のファッション業界と、それを支えるコミュニティの形なのです。

このコミュニティをより広く実現するために、デザイナーと組んで、実験的な取り組みをスタートするところです。また、オンラインでトータルコーディネートを提案する企業、某超有名サブカルアイドルのプロデュースチームとつながりを持ち始めました。こうしたいろいろな人たちとつながって、サステナブルな社会を志向するコミュニティを作っていこうとしています。

サステナブルな社会では、モノを大量に購入・消費するのではなく、本当に気に入った数少ないものを大事に使うというスタイルが主流になるでしょう。ファッションは、デザイナーなどの作り手の哲学・思想が色濃く出るアイテムであり、消費者はその哲学や思いに共感して購入するという流れができているので、サステナブルな社会の実現にうってつけのフィールドだと思っています。

来年度は『TRIBUS』となる、このリコーの取り組み全体については、今回私がカタリストの皆さんからいただいたものを、同じように提供する場であってほしいと願っています。つまり、本当に忌憚なく、ガンガン突っ込んできたり、深く理解して積極的に関わってくれたりするようなカタリストのあり方です。それはサポーターじゃなくて、「仲間」になってくれるということ。そんな仲間と繋がれる場にしてほしいと思います」

曽我「本業についてなんですが、ある案件が追い込みになっていて、植田さんの事業と同じようには行きませんが、ひとつひとつきちんとやっていきたいというのがひとつ。

このアクセラレータープログラムについては、社内チームのお手伝いをもう少し継続する予定です。また、このカタリストの活動を部署に持ち帰って話しています。それが奏功したのか、来年度にエントリーしたいという部署内の社員から、『このプラン、カタリストとしてどう思う?』なんて相談を受けるようになりました(笑)。まさにカタリスト=媒介としての活動になっていますよね。

今年のプログラムのおかげで、社内が大きく変わりつつあると感じています。私の周りには、設計、開発などの理系の人が多いんですけど、そういう人はチームを作るのが苦手なんですよ。来年度からのTRIBUSを通して、自分から手を挙げてチームを作る人が増えてくれればいいなと思っています」

宮下「まずプログラム全体に対する期待として、社外のスタートアップを募る際に、今回の植田さんのようなシードアイデアの状態のチームをもっと増やしたらどうかなと思います。そうすると、私たちのように社内から関わるメンバーも普段ではできないことを経験することができると思います。

社内の仕事や職場の面では、リコーの本部を含めリコーグループ内に流れている新しい空気を自社内の戦略検討や課題検討の触媒にすることができるんじゃないかと思っています。それは、カタリストとしての活動を通して、リコージャパンやリコーの事業本部の中で、どんな温度感でどんなことが考えられ、どんなことが起きているかもあわせて知ることができたから。社内メンバーにリコーグループ内の他社が、どんな温度感なのか、『リコーの本部ではこんなことが起こっているよ』とか、『こういう発想を待っているようだ』とか、そういうことを伝えることで、テーマ検討や課題検討の場の温度を上げられるんじゃないかと思います。

そしてもうひとつ、自分が応募するかどうかは、アイデアが温ったまるかを見ながら動こうと思ってます。気が付いたら既にTRIBUS応募へ向けて動いている三谷さんを手伝っているという可能性もありますね(笑)。そして、今後の植田さん達のチームがどんな活動をしてどのように進んで行くかも見させていただきたいと思います」

三谷「実は、入社時にTRIBUSと同じような、恒常的に新規事業開発を促す仕組みをリコー社内で作りたいと考えていたんですよ。ただ、これは一回だけではダメで、何年も続けなければならないものです。エントリーした人は、1回失敗しても、それを踏み台にしてまた翌年にエントリーすることができるような体制でなければ、新規事業開発が次々と生まれてくるというな環境になるのは難しいと思います。もちろんそれを可能にするための綿密な仕組み・体制や、会社としての体力も必要です。TRIBUSはまさにそれを実現しているもので、継続して実施すると宣言もしている。素晴らしいことだと思います。

来年度のTRIBUSには改めてチャレンジするつもりです。今年カタリストとして学んだことは本当に多くて、どれだけ活かせるか――正直不安はありますが、頑張ってみたいです。

あとは、カタリスト経験者として、プロジェクト自体を盛り上げる活動もできると考えています。カタリストって想像以上に汎用性のある仕事で、参加チームにアドバイスしたり、面白いことをやっている人たち同士をつないだり、もっと言えば、参加者たち全体を盛り上げるようなこともできる。そういうことも意識して取り組めたらと思っています」

TEXT BY Toshiyuki TSUCHIYA



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