「外に目を向けて、“正しく”チャレンジしてほしい」 VCから見たTRIBUSの可能性とは

社外から見るとTRIBUSはどう見えるのだろうか。今回は社外審査員として参加しているANOBAKAの萩谷聡さん、Spiral Innovation Partners General Partnerの岡 洋さんのお二人にお話を伺った。スタートアップ界隈の現状、VCの仕事について、スタートアップ文脈における新規事業開発のリアル。そして、その景色の中に浮かび上がるTRIBUSの姿とはどのようなものなのか。


萩谷聡(はぎや・さとし)
東北大学大学院理学研究科修了。在学中からWebサービスを立ち上げ運営。卒業後KLab株式会社に入社、ゲーム事業部を経て、KLab Ventures株式会社(のちに株式会社KVP)に参画。2020年にMBOで独立、ANOBAKAに社名変更する。一貫してシード期のスタートアップに特化した投資を行っている。
株式会社ANOBAKA:https://anobaka.jp/

岡 洋(おか・ひろし)
千葉大学大学院自然科学研究科修了。株式会社IMJ Investment Partners(現:Spiral Ventures Pte.Ltd.)の立ち上げ、IMJ Investment Partners Japan(現:Spiral Capital株式会社)の立ち上げに参画し、のちにSpiral Innovation Partners General Partnerに就任。eiiconと設立したXSproutでは取締役を務める。キャピタリストとしての活動のほか、企業のコーポレートベンチャリング、CVC、アクセラレーションプログラムのサポートなどにも取り組む。
Spiral Capital株式会社:https://spiral-cap.com/




メーカーのアクセラレーションならではの面白さ


――TRIBUS審査員を受けたきっかけを教えてください。


萩谷 ゼロワンブースターの合田ジョージさんに、リコーが社内アクセラレーションを始めるので、審査員で参加してもらえないかとおつなぎいただいたのがきっかけです。個人的にはすごく楽しみでしたね。僕も理系で大学院にも行っていて、同級生や周囲でリコーに就職している人が結構いたんです。カメラも好きだし、リコーの仕事に関われるのはうれしいなというのが正直な感想でした。


株式会社ANOBAKA 萩谷聡氏

 私もジョージさんからのご指名です。当時、Spiral CapitalグループでCVCやオープンイノベーションの支援をしていたので、リコーと一緒にその最前線に関われるのは楽しそうだなと思いました。私は2014年ころからコーポレートアクセラレーション等のお手伝いをしていましたが、ちょうど業界が盛り上がってきたところにリコーが参入してきたという印象です。


萩谷 そうですね、2014〜16年頃が、オープンイノベーションが盛り上がった時期でした。ただ、当時は鉄道や不動産、エンタメといったインフラ系の企業が取り組んでいるのが主流で、メーカーはあまりなかった。その意味で、メーカーのリコーの参入は非常に楽しみだと思った記憶があります。


 インフラでも通信インフラの文脈が強かったので、メーカーは入りにくかったんでしょうね。メーカーが遅かったもうひとつの理由は、イノベーションがクローズドだったからです。R&Dの部隊があり、研究所があり、そこでイノベーションを起こしてきた伝統があった。そこがようやく開かれてきたというタイミングでした。



Spiral Innovation Partnersの岡 洋氏

――審査されてきたなかで、印象に残っているチームはありますか。


 これは難しい質問(笑)。でも、TRIBUSのチームで最初に思い浮かぶのはRANGORIE(ランゴリー)かな。「リコー、インド、下着」。このインパクトは忘れられない。起業に至るストーリーも含めて非常に印象的でした。


萩谷 僕はエチオピアの買い物支援のアプリです。グローバルで取り組んでいて、そこをリコーのR&Dが研究のために一旦やってみるというところも懐の深さがあってすごい、と感じました。


 ビジネスとして面白いと思ったのは、天体望遠鏡のアイデア、2.5次元のプリンティング事業。360度カメラのTHETAを海中で使う「STAYHTEE」も良かった。それこそリコーじゃなきゃ出てこないアイデアだったでしょう。


萩谷 そうそう、ハードが出てくるのはリコーならでは。スタートアップではハードが出てきにくいのですが、TRIBUSでは普通にハードがいっぱい出てくる。それはTRIBUSの面白さのひとつですね。STAYTHEEもそうだし、プロジェクターの「Image Pointer」も製品化までいっているのがすごい。普通その手前で止まりますからね。


 あと、審査会場の印象で言えばやっぱり山下会長の気さくな人となりが全体の雰囲気をつくっているなと感じますね。毎回とても和やかであたたかく、TRIBUSらしさが醸成されてきているように感じます。



事業を最後までやりきれるかどうかが審査の重要ポイント


――審査する際、どんな点を見ていますか? 投資と共通する部分は?


 投資については、コンセプトや投資領域、チケットサイズがファンドによって異なるので審査とは別ですね。


萩谷 ただ、僕らはシードに特化したVCなので、ある程度近しい部分はあるように思います。見るところは、経営者、マーケットサイズ、そして足元の課題の強さ。これはTRIBUSでも同じ観点です。重要視している課題の強さ、課題の解像度を上げにいっているか、ソリューションがハマっているかを見ています。あと審査の際は「やる気」に注意しています。どれくらい本気なのか、また、中間審査のときから最終審査の間にどう変わったか、定点観測的に見ています。


 そうですね、投資する、しないとは関係なく事業を起こすという点では、市場環境や競合優位性、やりきれるかどうかというのは絶対重要なので審査でも見ているところですね。




――お二人の投資家としての哲学があれば教えてください。


 やはりスタートアップというのは事業を起こし、新しい価値を生み出して、社会に影響を与える“生き物”だと思うんですね。そこに携わることで間接的に事業開発を行っている感覚で、その事業開発を通して社会に貢献したいというのが、私が投資家をしている理由です。だからインパクトの大きさは投資への着火材料のひとつにはなっています。逆に興味のない事業はスーッと抜けていっちゃう(笑)。また、VCはリスクテイクする生き物でなければならないと考えています。安牌にだけ投資をして確実にリターンを得るのならVCでなくていい。誰も気づいていないところ、僕らだけしか理解していない価値に投資をしたいという思いがあって、逆張りとまでは言いませんが、難易度の高い案件に果敢にチャレンジするようにしています。


萩谷 僕らANOBAKAはシード対象のファンドで、領域もオールジャンルで、どちらかと言えば「経営者に投資する」という側面が強いんです。なので哲学というよりは姿勢に近いかもしれませんが、経営者の話をしっかり聞いて、聞き切るようにしています。経営者は「これをやりたいんだ」、「こういう世界をつくりたいんだ」、「こういうところからアプローチしていくんだ」ということを、まくし立てるわけですが、プレゼンだけだとやはり粗くて、突き詰めていくと結局何がやりたいのか分からないということもあります。

しかし、さらによくよく聞いていくと、結構面白そうな課題やインサイトがあって、良いところに目をつけているな、確かにニッチな市場だよな、ということが結構出てくるんです。そこを見逃さない。ちゃんと事業に持っていけるようにアシストしたり、ファイナンスのアドバイスをしたりすることが重要かと思っています。僕自身、先入観を持って決めつけないようにアンラーニングしながら、フラットに聞くようにしています。


 俗っぽい言い方になるかもしれませんが、「イケてる」起業家は、いくらでも言葉や考えが出てきますよね。プレゼンには現れていないことでも、聞けば「それは実はこういうことで……」「それは5年後にやろうと思っています」と、ものすごく考えていたり研究していたり、さらに行動もしている。そういう起業家がいいですね。


萩谷 そうですね。考えきっていたりもしますしね。


 そこには地頭の良さも必要になってくるかもしれませんし、スーパーマンな人もたまにいるんですよね、「うわ、違うな」という人。「これは何やっても成功するな」みたいな。来ません? そういう人。


萩谷 うんうん、たまにいますね。


 我々も何百人、何千人とお会いするわけじゃないですか。その中で単純な相対評価として、プレゼンがとてもうまいとか、数字にとても強いとか、テックにすごく詳しい起業家はいっぱいいて、「こういうタイプはこういう立ち居振る舞い方をする」というのはイメージできるんです。でもたまにそれを超えてくる人がいる。


萩谷 「この事業だったらここが課題になるな」とか「ここ課題になるときどう突破するかな」ということを、いろいろな角度から当てていくと、それを上回ってすごく考え抜いた回答をする人がいるんですよ。だから起業家がその事業を考え抜いているかどうかは見ていますね。逆に、僕らがちょっと調べて出てくるようなことを知らないと「あれ、大丈夫?」と思っちゃう。


 とはいえ、起業家がすべてスーパーマンでなければならないということでもなく、意外と“凡人”も多いんですよ。圧倒的な熱量と行動力で凡人じゃなくなっているんです。社長や経営陣がスーパーマンでなくてもいい。例えば自分はどうやってもメジャーリーガーにはなれないけれど、メジャーリーガーを雇えるだけのファイナンスと人間的魅力があればいい。そのように、社長は自分に足りないものをメタ認知して、それを調達できる力があるかどうかが重要になる。だからテックオリエンテッドの社長でもいいし、ビジョナルな社長でもいいし、引っ込み思案な社長でもいいんですよ。チームとしてこの事業、この市場で戦ううえで、最適な状態を作れるかどうか。そこを考え抜いて、行動しているかどうかが重要です。


萩谷 それは同感ですね。僕個人としては、巻き込み力があるかどうかは意識して見ていますね。お金もない、人もいない、何もアセットがないというときに、優秀な人を連れてこられるかどうかが非常に重要です。



――起業する側に必要な資質、求められるマインドセットとは?

 やはり行動力だと思います。起業家というのは、何もないところからゼロイチをやる人、皆が気づいていないところに猪突猛進できる人なので、圧倒的に行動力がなければダメだと思います。加えて鈍感力、楽観力というか、へこたれない心。さらに胆力、何くそ!という反骨心みたいなものも必要。そして、事業の課題を乗り越えていかなきゃいけないので、地頭が良く、知的好奇心旺盛で、何でも学んで変えていくぞという姿勢。そういうものを持ったうえで、謙虚で人となりもいい人(笑)。


萩谷 そこまで持っていればいけますね。楽です。




 たまにいるんですよね。ムチャクチャ頭いいな、すごくいい人だな、それでいて一番働いているな、という人。でも嫌な人でも成功することがありますからね。難しい(笑)。


萩谷 日本もスタートアップへの投資が増えてきて、この数年、優秀な人が集まるようにはなってきているんですよね。でも、あまり伸び切らないところもあるんです。周りもどんどん優秀になってくるし、事業アイデアも出尽くしてきてしまっている中で勝ち切って一気に伸ばすというのは、相当狂気じみたスピード感、巻き込み力、綿密な計画などが必要になってくるのかなという感覚です。今、スタートアップの仕方や事業検証の方法等は、ネットで調べるとすぐ出てくるので、「こうやればいいんでしょ?」というくらいの、“そこそこの人たち”はすごく増えているんです。日本は同調圧力も強く、飛び抜ける人がなかなかいない。だから、そこを抗って自分の頭で考えて抜け出していかねばなりません。スピードも、思っている2倍以上、ちょっと狂気じみていると思うくらいでやらないとダメかなと最近思っています。


辛いときでも伸びる兆しを見逃さず、ファイナンスをつなげていくのがVCの仕事


――今後、注目している事業領域があったら教えてください。

萩谷 僕としては生成AIに期待をしています。ANOBAKAでも生成AIに特化したファンドを立ち上げました。


 これは世界的にも同じですよね。


萩谷 非常に大きなインパクトになりますし、技術的なブレイクスルーになると思います。世界で一番有名なシードアクセラのYコンビネータでも、7、8割は生成AIのスタートアップです。日本もこれから増えていくと思います。特に生成AIで期待しているのは、ホワイトカラーを置き換えるポテンシャルがあることです。専門的な知識、情報に関したものはホワイトカラーが担うものでした。しかし、自立型エージェント等で対応可能になってきましたし、今後より完成度の高いサービスも出てくるようになるでしょう。ステップは何段階かあるでしょうし、時間までは読めませんが、この分野のスタートアップが増えてきたら、イノベーションにつながるのではと期待しています。





 Spiral Capitalグループも同じく、ジェネラルファンドでは、AI、ロボティクス等を重要カテゴリーに置いています。社会を変革するものとして見ているということですね。iPhoneやクラウド環境が出てきた感覚に近く、そこに乗っかるサービスも含めて社会構造、顧客体験が完全に変わります。


萩谷 今インフラレイヤーにあるLLMのオープンAIや、AGIと呼ばれる汎用人工知能などのAIには大企業が大量のお金を注ぎ込んでどんどん優秀になっています。そういう基盤モデルが優秀になると、バーティカルな方向に期待がかかります。例えば医療や建設分野。これは国や言語によって得意とする領域が異なりますし、マルチモーダルのようにリアルな世界のデータと噛み合わせて作る新しいAIのモデルにも期待しています。



――これまで関わられた中で、印象的なスタートアップの成功例、失敗例を教えてください。

萩谷 僕らはシードVCなので、いかにPMFさせて、しっかり伸ばして、シリーズA、Bにつないでいくかということが重要なんです。その意味で成功例のひとつと言えるのが、セールスインテリジェンスのA社。最初は今とはまったく違うモデルだったのですが、日次・月次でしっかり使われるように、データがアップデートされていくサービスにどうやったらできるか、ということを毎日喧々諤々ディスカッションしているうちに、今のインテントセールスのアイデアが生まれてきて、一気に成長したということがあって、これは貢献できたひとつかなと思っています。

もうひとつは、オンライン医療のB社。僕らVCの役目のひとつに、次のファイナンスにつなぎきるということがあります。B社はオンライン診療の先駆け的存在で、最初は花粉症やAGEなど幅広くやっていましたがなかなか伸びず、キャッシュが尽きて潰れそうになったときに、女性のPMS向けのサービスを出したらこれがすごく伸びてきた。そのタイミングで僕らもすごく動いて、なんとか資金1億円くらい集めたということがありました。B社はそこから一気に伸びてEXITまで行ったので、ちょっと辛いときでも伸びる兆しを見逃さずに、次の投資家にしっかり見せてファイナンスをつなげていくというVCの仕事がしっかりできた例だったと思います。

失敗事例はいっぱいありすぎて、どれと絞ることが難しいです。ただ、僕らにとっての失敗は経営者が諦めることなんです。ボキッという心の折れる音が聞こえるんですよ。こちらが経営者の状況に気付けなかったり、逆に経営者側が弱みを見せたくないということもあったりして、うまく終わらせることができなかったことはあります。それは辛いですね。どうしても経営者が頑張れる期間はあります。そこに気付いて、良い形で終わらせてあげるということは結構あるし、VCのリアルですね。


 VCがニュースになるのは、ファンド作った、出資した、EXITした、というときくらいじゃないですか。でも、投資してからはほぼ谷ばかりで、僕らの業務のほとんどは、その谷を伴走することなんです。資金がなくなるというのは日常茶飯事だし、創業者4人のうち3人が離反するとか、経営者と株主が揉めるとか、競合企業から裁判を起こされるとか、表には出ませんが、想像しうる限りのハードなことはほぼ全て起きています。こちらも病んでしまいそうですが、伴走しきらなきゃいけないので、致命傷にならないように最大限サポート しなきゃいけない。起業家が落ち込んでいるときに「そういうこともあるって」と肩を叩いて一緒にご飯に行くということは何度もありました。VCのリアルってそんなもんですよね。


萩谷 岡さんのほうが、そういう部分がより多いのかもしれませんね。僕の場合はシード期で、まだメンバーもステークホルダーも少ないので。でもA、Bくらいになってくると起業家から経営者にならないといけないし、ステークホルダーも増えていろいろ言ってくる人も多くなってくるので、バランスをとったり、円滑に進めるために一緒に作業したりということが多くなります。


 我々の仕事は基本的に地味ですね。ファンドレイジングなんて特に地味。でも、それでいいんです。起業家が輝いてこその我々なので。輝きたいという人はこっち側にはいなくて、むしろ起業家になっているはず。我々は本当に裏方みたいなものです。




TRIBUSを20年、30年やれる体制に、会社にすること。会社の本業にしていくこと


――TRIBUSに期待すること、チャレンジする人へのメッセージをお願いします。


 私はTRIBUS、すごくいいと思っています。仕組みとして非常に洗練されている。社内からアイデアが出てきてPoC、事業開発する流れがあって、そこに協力、応援する仕組みもある。外部スタートアップも含めて、リコーの事業と連携する体制もある。これは本当に良いことだと思っています。望むことは、これを20年、30年やれる体制、会社にしなきゃいけないということ。そして、会社の本業にしないといけない。例えば営業部や開発部と同じ扱いになっていますか、ということです。今は多分違う扱いになっているので、TRIBUSの事業をちゃんとミッションとして持った役員がいて、事業にどうやって影響を出していくかにコミットし、そこで評価される人がいないといけない。それが多分、次のチャレンジなんだろうなと思います。

そのためには、経営陣の腹の括りも必要だし、人事制度も含め社内のいろいろなことにコミットしないといけない。予算をどうするか、撤退した社員をどうするか、グループ企業をどう巻き込むか、やらなきゃいけないことが相当あるでしょう。しかし、それをやれるだけの土台ができてきたのは素晴らしいことだと思います。


萩谷 そうですね、長年続けていることは本当に素晴らしいと思います。毎回レベルも上がってきているし、経営陣がちゃんとコミットしている。プレゼンのひとつひとつにちゃんとディスカッションして、どう本業に活かせるかを考えている。これはなかなかないことだと思います。ただ、岡さんも仰っていたように、本丸の事業になるくらい大きなものを作っていけるかどうかが、今後期待したいところです。TRIBUSの懐の深さが、もっと社内で当たり前になるといいですね。そうなると、TRIBUSを利用してやろうという社員の方も増えてくるでしょうし、事業で必要な機能をTRIBUSで立ち上げてやろうということがあってもいいですよね。


 チャレンジする人には、“正しく”チャレンジしてほしい。萩谷さんも仰っていましたが、起業も新規事業も、今はググったり本を読んだりすれば一定のところまでリーチできるんです。それをせずに頑張ろうとすると、車輪の再発明じゃないですが、しなくていい失敗をしたり、無駄な時間を使ったりしてしまう可能性が多分にある。特に社員の方は、普段から起業家と話しているわけではないので、そのリスクは高いでしょう。だからリコー社員の方ほど、TRIBUSを活用しながら、外にも目を向けて、チャレンジの仕方や環境を学んで正しくチャレンジしてほしいと思いました。


萩谷 岡さんに言いたいことを言われてしまったな(笑)。ちょっと付け加える感じで言うと、社外に目を向けて、そして内を見てほしいと思います。社外のレベルやスピード感を知るということもありますが、外を見て社内を見ると、リコーにはアセットがたくさんあってめちゃくちゃ恵まれているということに気付くと思うんです。ハードの技術力、BtoBの販売体制、さまざまな課題にアプローチする体制など、本当にアセットが揃っています。外に目を向けつつ、内の活かし方を考えていただければと思います。




――TRIBUSを通じてリコーらしさを表現するとしたら。


 リコーとしてTRIBUSに取り組む必要性、意味を見出していく必要はあるでしょうね。メーカーで販社も持つ、ある意味コングロマリットとしてひとつのソリューションをクライアントに届けるのがリコーだとすると、TRIBUSでもそれをやらないといけないかもしれない。本体が10→100を最大・極限的にやれる組織だとすると、TRIBUSは0→10を日本最速でやれるようになると、リコーらしさが生まれてくるのかなという気がします。全然関係ないけれど、最近会った事業会社が、いち事業部の中にCVCを作ったんですよ。課題も明確だし、ターゲット領域も明確で、投資したいところも明確。なのでとても速い。TRIBUSを事業の本丸にしていくという話で言うと、やはり事業部の課題にアラインさせていくことが重要なのかなと思います。ただ、そうすると近接領域になってしまうので、それをいかに遠い領域でやるか。また、事業部の課題に5年後、10年後、20年後にTRIBUSが活かされるという形をどうやって作るか。その辺にもリコーらしさを出す鍵があるかもしれません。

萩谷 僕はすでにリコーらしさは出ていると思うんですよ。他社では「沼ラジオ」のようなラジオ発信とかやらないし、ハードもこんなに出ていかない。それに「 “はたらく”に歓びを。」というリコーのビジョンを、社員の皆さんがものすごく口にするじゃないですか。あれはすごく良いことだと思っています。この先、AIやデジタル化が進んで、効率化のソリューションもどんどん出てくると、あれ?やることなくなっちゃうんだっけ?ということになりがちなんですが、やっぱりここで働くのが楽しくてやりがいがある、という環境を作ることは非常に重要だと思っていて、今のTRIBUSはそれができているのかなと。だからリコーらしさ、全開!という気がしています。




PHOTOGRAPHS BY YUKA IKENOYA(YUKAI) 
TEXT BY TOSHIYUKI TSUCHIYA 



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