環境ビジネスで世界のトップを。応募開始に向けた魂のリバースピッチ

今年の「TRIBUS」では、特に外部ベンチャー、社内起業家とコラボしたい事業部からの「リバースピッチ」を受け付けている。「リバースピッチ」とは、「ピッチ」と呼ばれるベンチャー/スタートアップ企業がリソースを獲得するために投資家や企業に向けて行う短いプレゼンテーションの反対で、企業が抱えている課題を起業家に投げかけることによって、解決方法を起業家から募るためのプレゼンテーションのこと。

そこに最初に手を挙げたのが環境・エネルギー事業センターだ。脱炭素社会、循環型社会の実現に向けて、「省資源」「創エネ」「省エネ」といった角度からアプローチしている同事業センターは、新規ビジネス開発に取り組む、と同時に、自治体や政府機関、企業等、外部との提携、協業、コラボにも意欲的に取り組んでいる、まさにTRIBUS向けの事業部門なのである。しかし、プリンターや複合機のイメージが強いリコーが高い環境目標を掲げ、環境問題解決にも力を入れていることは、特に外部ベンチャー等には意外なほどに知られていない。そこで今回、「こんな人たちと一緒に取り組みたい」という環境・エネルギー事業センターの思いを熱く語ってもらった。


■ 環境・エネルギー事業センターが求めるもの

  • 脱炭素社会、循環型社会実現に資するアイデア、技術
  • 『環境』そのものズバリの技術やアイデアではなく、まったく関係ない領域との“異業種コラボ”にも期待
  • 『そう来たか!』と思わせるような、意外性のあるアイデア、コラボに期待
  • 『環境』に加えて、『快適性』がキーワード

■環境・エネルギー事業センターが提供できるもの

  • 環境ビジネスのパイオニアになる可能性
  • 大企業らしからぬ意欲的な開発陣。そのサポート
  • マーケティングや実証実験のフィールドとなるリコー環境事業開発センター(静岡県御殿場市)
  • 富士山を間近で見られる美しく壮大な環境

■ こんな人・企業の応募を待ってます

【社外】ある程度出来上がった技術をお持ちのベンチャー(研究開発よりは進んだ段階のイメージ)
【社内】かつて失敗したりお蔵入りしたりした技術やアイデアをお持ちの方。社内起業に興味のある方。
【共通】やり抜こうとする強い気持ちを持った方。社会課題解決に思いを持った方。柔軟に考えて取り組める方。


環境・エネルギー事業センター 循環型ソリューション開発室長 原田忠克
事業戦略室 商品戦略グループ 平田哲也
事業戦略室 事業戦略グループ 松田喜勝

 

ただの環境ビジネスじゃないリコーの環境事業開発

――現在の環境・エネルギー事業センターでの主な取り組みについて教えて下さい。また、特に注力している事業がありましたら教えて下さい。

原田「大きく言うと、本事業センターは脱炭素社会、循環型社会の実現を目指して設立されたものです。細かな開発テーマは多くありますが、柱となるテーマは『二酸化炭素の削減』『省エネ』『創エネ』の3つです。

この中で、現在特に注力していると言えるのはオフィスにおける取り組みです。例えば『RICOH Smart MES』がその代表的な例ですね。省エネ、働き方改革に寄与することを目指して開発されたもので、人の在不在・位置、温度や照度など周辺の環境のセンシングによって、照明と空調を制御し、オフィスの快適性・利便性を向上させます。
単に制御する、省エネするというだけではないのがポイントだと思っています。例えば感情に訴えるようなことを意識していること。日中は眠気を抑え、やる気を出すために照明の色を寒色にして明るく照らし、夕方になるにつれて、時間の感覚が意識できるように暖色に変えて明るさを落として行ったりが可能になります。

もうひとつのポイントは、これが他社との協業で成立しているものであること。例えばLEDは東芝、遠藤照明といった企業から提供を受け、リコーはセンシング情報を使った照明や空調機器の制御とクラウドの部分を担当しています。

事業センター全体ではRICOH Smart MESが特徴的ですが、私が関わっている別のセクションでは、リユースまたはリサイクルに関わる商材およびビジネスの開発に取り組んでいることもご紹介しておきたいです。
ハイブリッド自動車の車載電池のリユース技術の開発、リサイクルするプラスチックの種類を判別するハンディセンサーの開発などがあります。車載電池のリユース開発は昨年度の環境省委託事業で実証しております。ハンディセンサーは環境省の補助も受けて、2021年の実用化を目指しているところです」

 

事業化・ビジネス化と認知拡大が問題

――2019年のアクセラレータープログラムをご覧になって、どのように思われましたか。

原田「昨年度、私は提案内容を判断し、社内事業とのシナジーが活かせるかどうかを探索するという立場におりました。特に最終ピッチを聞いていて、社内起業家精神を持った社員が多いことに心を動かされました。自分の仕事をやりながら、新しいことに取り組みたいという意欲。そして行動。素晴らしいと思います。

一方で、探索する立場として感じたのはビジネスとしての成否についての判断が弱いということ。事業化する、ビジネス化するというシナリオの部分がどうしても弱い。『面白いけど、本当にビジネスとして成り立つのか?』と。もちろん、そこの事業化の部分を、リコーの事業部門サイドに期待してエントリーしているということもあるのかもしれませんが、もう少し深堀りしてもらえると良かったかなと感じました」

平田「私は昨年社内起業家プログラムに応募してるんですよ(笑)。残念ながら最後まで残ることはできなかったんですが。

現在の部署に来る前は、14年くらいプリンターの設計をやっていたので、技術者の仲間と組んで、技術的に面白いと思うものをプランして提案しました。このプログラムの良い点は非採択であってもフィードバックを厚くくれることですね。そこには、やはり事業化、起業の視点が弱いという指摘がありました。

昨年は、社内から110件、外部から104件のエントリーがありましたが、環境関連のエントリーは少なかったと聞いています。私自身そうでしたが、リコーは複合機、プリンターの会社のイメージが強く、ビジネスとして環境問題に取り組んでいるとは思われていないようにも感じますね。この点は、強く発信していかないといけないなとも思います」

松田「リコーは、日本で最初に『RE100』(“Renewable Energy 100% project”事業で使うエネルギーを100%、再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアチブ)に参加した企業ですし、複合機のリユースに関しては、競合他社と比較しても非常に高いレベルで実現しているので、リコーの環境の取り組みは決して知られてないわけではないと思うのですが、いかんせん、複合機のリユース以外ではまだまだ知られてないのかもしれないですね」

 

――今年度、プロジェクト募集を決めたのはなぜでしょうか。

原田「環境関連の応募が少なかったことが一番の理由です。これまでに寝かせていたアイデアや、一度は動かそうとして中断したテーマなど埋もれているリソースを発掘したい。時代の移り変わりが早いので、当時はうまくいかなかったものでも、今のテーマに照らし合わせるとうまくいく、ということも往々にしてあります。例えば社内でも、部門が変われば捉え方が違うということもあるでしょう。過去にうまくいかなかったケースでも、このプログラムなら越えていくことができると思います。失敗したものを掘り起こしてくるのはイヤかもしれませんが、ぜひ応募してください。

スタートアップの方には、なかなか知られていなかったリコーの環境技術についてこれを機に知ってもらい、ぜひエントリーしてほしいです。リコーの持っている環境系の技術とお持ちの技術やテーマが、うまく協業できるのではないか。その可能性を一緒に探りたい。御殿場の事業センターに来ていただいて、ぜひ事業化まで目指しましょう」

 

環境技術に囚われず、幅広いアプローチに期待

――どういった人・企業と協業したいかイメージがありましたら教えて下さい。

原田「考え方としては、『環境技術』に囚われすぎなくてもいいというのがひとつあります。今ある環境技術も、他の部分から派生して広がってきたものもあります。考え方次第でつながるものも生まれるはず。そこのところを考えて提案してもらえると嬉しいです。

もうひとつは、RICOH Smart MESのように『快適さ』をキーワードにすること。快適性と両立するような省エネが目指すところです。」

――社外のベンチャー、スタートアップについて、なにかイメージはおありですか。

原田「ある程度確立した技術をお持ちの方。共同研究から始める、というよりは、早くビジネス化、事業化して出していくのが狙いとなります。

また、必ずしも環境技術の王道、本丸を行くようなものでなくていいと考えています。というよりも、これまでいろいろな提案を見てきましたが、『環境に良い技術です!』というほうが、意外と的を外しているようなことが多いと感じています。むしろ、全然関係ないものを『こうつないだら役に立ちます』というようなほうがいい。『そうくるか!』というようなものに期待したいですね。

精神面では、新しいことにチャレンジし、やり抜こうとする強い気持ちを持った方。自由な発想で考えられる方。技術はたしかに重要ですが、世界一の技術から必ずしも世界一のビジネスや商品が生まれるとは限りません。そこそこの技術であっても、着想や発想で良い商品が生まれることも多いのです」

松田「環境問題は、現代社会が持つ課題の最たるもののひとつです。その社会課題解決に強い思いを持っている方に応募していただけるとうれしく思います。世界的な関心事であるSDGsの達成というところも視野に入れてほしいですね。」

――リコー、または環境・エネルギ事業センターとの提携によるメリットにはどんなことがありますか。

松田「全社的にいえば、リコーグループのリソースを使えるということ。環境・エネルギー事業センターでいえば、非常にオープンなエリアで開発できる環境があることです。開発したものを、いろいろな人に見てもらえます。社外の人にも見てもらえる機会も多いんですよ。リコー環境事業開発センターは環境問題の関係者の間では有名で、年間4000名を超える企業、自治体の方が見学にいらっしゃいます。そういった方々に向けて見せる機会もありますので、マーケティング的には有利ではないでしょうか」

平田「リコーグループの販売力・展開力を使えるのは大きなメリットではないかと思います。プリンター、複合機の地盤がありますから、いい技術、商品があれば、即展開していくことが可能でしょう。

環境・エネルギー事業センターに関しては、まず自由度が高いこと。人数が少なく、それぞれ得意な分野で開発研究を進めています。

環境問題はまだまだビジネス面では未成熟な部分もあります。ここでビジネス的に成功することができれば、世界的な第一人者になれる可能性があります。リコーで開発研究しているものは、そういうものですので、ぜひ、積極的に参加していただきたいですね」

原田「御殿場は、富士山が非常にきれいに見えるところにありますので、日々美しい富士山を眺めながら仕事をすることができますよ(笑)。近くの東名駒門PAにスマートインターチェンジが開通したので、首都圏からも全然遠くありませんから、新型コロナウイルスの影響が終息したらぜひ一度お越し頂きたいですね。

御殿場で新規事業開発に取り組んでいる面々は、とにかく前向きでやる気のある人が多いのが特徴です。大企業にありがちな、『新しいことをやりたい』という思いを持った人に対してネガティブなことを言うような人はいません。これはベンチャー、スタートアップの皆さんにとっては、大きなメリットではないでしょうか」

 

応募、お待ちしています。

――改めて、今回の募集についての期待とメッセージをお願いします。

原田「新しいことをやるのは、非常に難しいものだと思います。しかし、同時に楽しいものでもあります。まず、お持ちのテーマ、技術で気軽に応募してほしい。

また、『関係ないかもしれない』という思いを、応募しない動機にしてほしくない。リコーならできるかもしれない、そう思って応募してください。応募していただいたものは、こちらでも目を通しどの事業に合うかといったところから検討もしますし、マッチングやサポートもしますので」

平田「環境ビジネスで成功すれば、世界的なパイオニアになれるでしょう。そこにチャレンジしてほしいです。2030年がひとつの大きなターニングポイントとなっています。10年ある、かもしれないし、10年しかない、とも言えるでしょう。そこに向けたアイデア、提案をお待ちしております」

松田「環境は待ったなしの問題です。環境事業は、これから絶対に必要になる領域であることは間違いありません。複合機を中心にやってきたリコーにとって環境事業は“飛び地”のようなものですので、リコーだけではまだまだ不十分です。うちの持っている得意分野と、これをお読みのあなたの得意領域でコラボして、環境事業を盛り上げていけたらと思います」

TEXT BY Toshiyuki TSUCHIYA



Share This

Copy Link to Clipboard

Copy