【Challenger’s Interview】まちのパン屋さんもデータ分析?TRIBUS 2020創業最年少スタートアップが目指す次の当たり前

導入したシステムに、日ごとに増していく顧客データ。せっかく集めたデータを生かしきれていないのはもったいない、そう考えながらも具体的な施策が思い浮かばない。デジタル時代のマーケターや営業担当者なら、誰でも抱えている悩みではないだろうか。TRIBUS 2020で、最年少企業としてエントリーしたdatagusto(データグスト)は、そんなデータの課題に真っ向から切り込んだスタートアップ。「データと次なる一歩を、つないでいく。」をミッションに掲げ、営業支援ツールやマーケティング支援ツールなどと併用し、誰もが気軽にデータ分析ができるAIソフト・サービス「datagusto」をリリースした。2021年3月のInvestors Dayでは、その発展性ゆえに「KDDI∞Labo賞」を受賞。創業最年少にもかかわらず、最速のスピード感と勢いで突っ走るdatagustoのCEOのパー麻緒氏に、TRIBUS 2020を振り返っていただいた。

 

株式会社datagusto 代表取締役CEO パー麻緒氏


 

データ分析は料理と同じ。データという材料さえあれば、誰でも美味しく調理できる

 

――まず、datagustoを開発するに至った経緯についてお聞かせください。

datagustoを立ち上げたのは、ハイブランドのバイヤーをしている知人から受けた相談がきっかけです。バイヤーは、約1年〜1年半先のシーズンに何が売れるかを予測した上で商品の仕入れを行う必要があります。そのためにはマーケットや顧客のデータを分析し、予測を立てることが肝要。しかし専門知識を持たない彼女にとって、通常業務と並行してデータ分析をするのは至難の技でした。そこで私は、「データ分析の知識がなくても、簡単にデータを扱えるツールを作ろう」と考え、datagustoの開発に取り組み始めました。

開発するうえでイメージしたのは、材料を入れてスイッチを入れるだけで料理が完成する調理器具。データは料理と同じで、調理してあげないと美味しく食べることができません。「データはあるけど、どう使っていいか分からない」と悩む人が、レシピに従って材料=データを入れるだけで、調理=分析を簡単にできるツールを目指しました。

まずは、目の前のデータを意識せずに使い、意思決定をするお手伝いをすることが第一。その先に、データによる意思決定が当たり前になる社会が実現したらいいなと考えています。

――TRIBUSにエントリーされたきっかけを教えて下さい。

エントリー当時は、まだ会社を立ち上げて間もない頃。どんな人たちがお客さんになるかが分かっておらず、さまざまな仮説を検証すべき段階にありました。さまざまなアクセラレータープログラムと比較検討する中でも、日本全国、グローバルに経営資源を持つリコーのプログラムであれば、いろいろな部署や職種の方々にヒアリングができると思いエントリーしました。山下社長のもと、全社一体となって新規事業の創出に取り組まれているという点も魅力的で、決め手になりました。

――採択されてから、TRIBUS期間中にはどのような取り組みをされたのでしょうか。

顧客層を明確化するためのアンケートと、β版を使っての実証実験を行いました。
アンケートでは、営業やマーケティングをはじめ、人事や経理など管理部門の方々にもお答えいただき、どんな部署の方にニーズがあるのかを検証することに注力しました。実際に、当初の仮説通り、費用対効果やアポ数などの定量的な計測ができる営業などの部署から「ぜひ使いたい」との反応をいただくことができました。

実証実験は、主にインサイドセールスや営業部門で実施しました。結果としては、データ内に「/(スラッシュ)」が入っていることでデータ処理ができなくなってしまうことを発見し、データの前処理のあり方について知見を得ることができました。

また実験を通して分かったのは、使う側は予測がしたいのではなく、最適解がほしいということ。例えば、『5時に行ったらアポが取れる確率は30%です』より、『5時までの間だったら、3時ころに行くのが一番いいよ』という回答の方がありがたいということです。言われてみれば当たり前のことではありますが、実際に現場の方々からフィードバックとしていただけたのは大きな収穫でした。

 

TRIBUSを通じ、toBだけでなくtoCのサービスへ

 

――実際にリコーグループ社員やカタリストと活動されてみて、いかがでしたか?

実証実験では、いろいろな視点からフィードバックをもらいました。例えば画面1つとっても、SI(システムインテグレーション)の方は「ここで問題が発生すると思います」「今後ここがこうなるといいですね」などのテクニカルなフィードバック、営業の方は、実際に担当者が使うときに課題になる点など、現場寄りの意見をくださる。おかげさまでバランスよくβ版の改修に取り組めたと思います。本当に熱心な方が多くて、プログラムを終えた今でも、相談するとすぐに意見をくださいます。

――今後、どのような展望をお持ちか教えて下さい。

今回のプログラムは3、4カ月と比較的短期でしたが、今後、中長期的にリコーとの協業を考えることができたらと思っています。3月のInvestors Dayでは「KDDI∞Labo賞」をいただいたので、KDDIさんという新たなパートナーとの取り組みも模索していけたら嬉しいです。

当社に関しては、今年(2021年)10月に製品版リリース予定しています。リコーの皆さんからのフィードバックを受けてブラッシュアップしたもので、製品版では、AIの民主化、データの民主化の一歩をより製品の体験で感じてもらえるようになる予定です。最終的には、町のパン屋さんやお菓子屋さんも気軽にデータ分析ができて、売れ行きを予測して廃棄を減らせるような誰もが使えるようなサービスにしたいなと思っています。

――TRIBUSへの参加を考える企業へメッセージをお願いします。

TRIBUSには、当社のようにまだ創業まもないスタートアップも、すでに軌道に乗っていて、今後さらに拡大していきたいと考えているスタートアップも、どちらも受け入れてくれる懐の深さがあります。また、チームを組むカタリストやサポーターの方々も、ビジョンに賛同し、同じ熱量で取り組んでくださる人ばかりですから、安心して飛び込んでみてほしいなと思います。

私は起業するとき、前職の元上司に、「起業したら、とにかくやりきるんだ」と言われ、それを心に留めてきました。何事かに挑戦していれば、辛く、大変な思いをする時もあります。でも、ダメになったらその時に考えればいい。とにかく始めたなら、やり切るしかない。私が言うのもおこがましいですが、これから応募される皆さんも、ぜひそんな心持ちで、前を向いて進んでいってください。

TEXT BY Toshiyuki TSUCHIYA 




Share This

Copy Link to Clipboard

Copy