設立したばかりの組織。だから関わり方も随意、自由。

FBD(Future Business Design)センター(以下FBDセンター)は、リコーのCTOをサポートし全社技術戦略を推進する技術経営センターからスピンアウトし、2036年のリコーのビジネスをデザインしようとする部署だ。今年4月に設置されたばかりで、聞けば組織のあり方はいまだ曖昧でニュートラルなところがある。しかし、それはより多くのパートナーと組むためであり、また、外部からの刺激によって変わることも想定しているからでもあるという。その意味で、TRIBUSはパートナーを求める初めての舞台となる。今回インタビューに応じたFBDセンターの神山は、「メーカーとしての枠を超えることもある」と明言する。組織的にはメインストリームから生まれた部署でありながら、メインストリームから逸脱することも敢えて辞さず、積極的に外部と関わり新しいビジネスをデザインする。そこでは外部のスタートアップの関わり方も多様で複雑で……ということはつまり、大層おもしろきものになりそうだ。
■ FBDセンターが求めるもの
  • 未来の社会実現、社会課題解決に向けた思い、理念
  • 思いはなくとも技術に自信があるスタートアップ。「自分の技術で社会にこんな影響が与えられる!」というもの
  • 関わり方への提案も含め、たくさんの刺激がほしい
■ FBDセンターが提供できるもの
  • 提携の枠や関わり方は決めていないので、スタートアップ次第でいろいろできる
  • 長期に渡るお付き合い、ビジネス
■ こんな人・企業の応募を待ってます
  • 思いのある人。自分の技術に自信のある人
  • 最先端技術にこだわっているわけでもなく、技術でなくてもいい。ビジネスアイデアも大募集

イノベーション本部 FBDセンター 神山秀治
人間中心のデジタライゼーションで、未来を創る ――FBDセンターについて教えて下さい。 大きく言うと、2036年に向けて「人間×デジタライゼーションで『“はたらく”に歓びを』提供する」事業の種を創出することを目的としています。もともと技術経営センターで提案したプロジェクトを、「自分たちでやってみろ」と言われて派生した組織で、センター長直下にフラットなメンバーが5人いるだけ。室長、グループ長といった階層はありません。3人がそれぞれテーマリーダーとなり、残る2人が全体見て横串を通す役割を担います。 特徴的なのは、既存のアセットにとらわれていないこと。オープンイノベーションや研究開発などの役割を担うイノベーション本部直下にあり、特定の製品やサービスの事業部ではないので自由な提案ができる。あくまでも、目指すべき未来の社会の実現と、そこに向けた社会課題の解決が目的としてあり、そのための事業を起こすことが狙いだから、既存のアセットからの発想はしない。「リコーはこういう技術があるから」「こういうリソースがあるから」というところを出発点にはしない。新規事業をやろうとするとどうしても“隣の庭の芝”――例えばリコーだったら、複合機じゃない別のオフィス機器とかを狙ってしまうものですが、そういうことはありません。 とはいえ、社会課題の解決だけをして、社会貢献すればいい、というわけではありません。リコーも企業ですし、私たちも給料を稼がなければいけないので、社会貢献しながら利益を生むことが大前提。しかし、極言してしまえば、本当の社会課題解決ができればお金は後からついてくると思っています。 FBDセンターの活動は、今日明日のビジネスを作るというものではないですね。中長期的に事業化を目指すもので、今年度中は、現在考えている課題が本当に強い課題なのか、ソリューション仮説の検証などを行っていく予定で、早ければ来年度から、試行なども含め、事業化に進めればと思っています。 ――活動の詳しい内容について教えて下さい。 テーマとして中心に据えているのは『人間中心のデジタライゼーション』というコンセプトです。私たちは『人間×デジタライゼーション』こそが、『デジタルトランスフォーメーション(DX)』だと考えています。 アナログをデジタル化するのがデジタイゼーション(Digitization)。そこに新たな付加価値を与えていくことがデジタライゼーション(Digitalization)。そして、人間を中心に据えて、デジタライゼーションを考え、進めていくことこそが、DXであり、これからの社会に求められることだと思います。そして、そこに、リコーが取り組んできた『働く』に貢献できる何かがあれば、一層良いと思う。 このコンセプトに基づいて、具体的なテーマとして 『ギグエコノミーを支える新しい雇用の仕組み』 『サプライチェーンの再構築が生み出す新しい価値の創出』 『「ワークライフインテグレーション」における新しい働き方の支援』 の3つを設定しています。各テーマリーダーが担当するのもこのテーマで、テーマごとに課題を設定し、その解決を事業化しようとしています。 『ギグエコノミーを支える新しい雇用の仕組み』は、定型的な仕事がAIに取って代わられ、人間にはより本質的価値が求められるようになる未来社会において、人間がその知的創造性を最大限発揮する環境、場のあり方は何かという問題です。そこでは各々の仕事はギグワーク(プロジェクト単位の仕事)となり、例えば商品企画のプロフェッショナルとして、就社でなく4社と契約して働いています、というような社会になるかもしれない。そうなると雇用の形も変わるでしょう。その時に、どんな働く場、人と会う場、環境が求められるのか。そういう問題に取り組みます。 『サプライチェーンの再構築が生み出す新しい価値の創出』とは、これまで大企業の統括下に置かれていた直線的なサプライチェーンが、サプライウェブになる社会のイメージです。そこに参画する中小企業はより自由になり、大企業に縛られることなく、対等の立場で独自のパスを構築できる世界になるでしょう。そのようなサプライウェブが実現するには、どのような問題を解いていけば良いのかがテーマです。 3つ目の『「ワークライフインテグレーション」における新しい働き方の支援』は、仕事と私生活がどんどん混じり合う社会を想定しています。現在も、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、物理的に仕事と私生活の距離がなくなってきていますが、これがもっと進むだろうと予測しています。1番目のギグエコノミーにも通じますが、より知的創造性が求められることになるとしたら、仕事と私生活の別け隔てはなくなっていくのではないかと思うのです。遊んでいるつもりが仕事になったり、仕事が遊びにつながったりもするかもしれません。『ワークライフバランス』というと、仕事と私生活がきっちりと分かれ、そのバランスを取りましょう、ということが重視されるニュアンスでしたが、これからは双方が混じり合うことが知的創造においては重要になるのではないか。その時に必要なものは何なのか。私生活の知識を広く仕事に活かせるような基盤を作ることがテーマのひとつです。 ――非常に幅の広い取り組みで、これまでのリコーの仕事の範疇を越える部分もあるように思います。 先程も申し上げたとおり、ビジョンオリエンテッドなので、その点あまりこだわりはないんですよ。必ずしも技術や製品だけに絞るつもりもありません。例えばギグエコノミーだったら、政策提言につながるよう活動もあるかもしれません。その意味で、メーカーの枠にとらわれてはいけないと思います。 そしてもう一つ思うのが、1社だけではダメということ。そもそも1社だけで解決できるような課題はそんなに大きな課題ではないと思うのです。多くの企業の皆さんと、パートナーとして提携して取り組むことができれば、より大きな課題解決に取り組めると思います。先程の例でいえば、私たち自身が政策提言しなくても、政策提言が得意な企業の方がパートナーになってもいいですし、『餅は餅屋』でお互いに得意とするところをサポートし合う関係が望ましいと思います。 TRIBUSからは刺激を。FBDは自由な関わり方を提供。 ――今回のTRIBUSにはなぜ参画したのでしょうか。また、どんなスタートアップの方にエントリーしてほしいと考えていますか。 たまたまなんですが、前の部署で近くの席に座っていた女性がランゴリー(2019年RICOH ACCELERATORでエントリー、採択された社内チーム)のメンバーだったので、直接関わってはいなかったのですが非常にプラスの印象を持っていました。そこに今回事務局のほうからお声がけをいただいて、TRIBUSでスタートアップの皆さんに呼びかけてみようかということになりました。 目的のひとつは、同じ思いを持つスタートアップの皆さんから刺激を受けたいということ。こちらからも、リコーとして提供できるものもあると思うので、お互いに持てるものを提供して良い刺激を与え合うことができればいいなと。 私たちの思いは、先程挙げた3つのテーマの通りです。やはり大事にしたいのは、スタートアップの皆さんがお持ちの思いが、私たちと同じベクトルであるかどうか。それがジャストで同じである必要はありませんが、お互いに賛同できる土台を築くことができればうれしい。 と言いつつ、逆にまったく思いが一緒でなくても、『うちの技術を使えばいけますよ!』というものがあれば、それも伺いたいというのも、本音としてはある。どうしても私たちだけでは限定的なものになってしまうということもありますから。スタートアップの方々のほうが柔軟な発想で、技術の使い方、ビジネスのあり方を示唆してくれるだろうという期待もしています。狭く限定するつもりはなくて、広く影響を与えてくれるスタートアップの方とお話ししてみたいです。 ――逆にFBDセンターが提供できるものは何かありますか。 リコーが持っている営業のリソースとか、世界各地の拠点、国内グループ従業員約3万人への実証検証などを活用いただけると思っています。 課題ありきで事業を作りたい。多くのパートナー企業の方と一緒に取り組みたい。そういう思いから、限定的なパートナーを募集するということをあまり想定していない。局所的な連携をしたいわけではないんです。 逆にいえば、思いがあるスタートアップの方だったら、どんな関わり方でもできる。先程申し上げたように、メーカーの枠を越えた取り組みもできると思います。TRIBUSはまさにそういうのに向いていると思ったわけです。また、一緒に取り組むことになれば、長期でのお付き合いになることも想定しています。 実は、今回FBDセンターとして募集するのは、時期尚早かもしれないという意見もあったんです。しかし、多少早かろうが遅かろうが、やはり、やることが大事かなと。それに、お互いのやることが決まりすぎているのも、パーツの組み合わせみたいになっちゃってあまり面白くないかな(笑)という気もしています。 ――TRIBUSにどんな期待、展望をお持ちでしょうか。 あるべき社会の実現、社会課題の解決などに向けて、共に歩んでくれる方が来てくれたら幸いです。というか、率直に言うと『うれしい』。 私たちが考えている道のりは長いものですので、途中で別れることがなければ、長いお付き合いになるでしょう。長い道を歩くなら、一人で歩くより、何人かで歩いたほうがいいじゃないですか。一人だったら道を間違えて迷宮に入り込んでしまうこともあるでしょう。2人だったら『そっちじゃないよ』と言いあえるし、道のりも楽しくなるでしょう。 自分が所属しているから言うわけじゃないですが、FBDの取り組みは社会的にも意義のある、そして楽しい取り組みだと思います。楽しいことを大事にしながら、共に未来を実現していきましょう。

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