語れ、未来を。創ろう、未来価値創造の聖地を。

リコーグループ側から、エントリーする社内ベンチャー、社外スタートアップに課題を語り、ほしい人材、技術を募る「リバースピッチ」。今回は、これまでとは一味違ったチームがエントリーを呼びかける。経営企画本部経営企画センターの「Fw:D Project Team」(フォワードプロジェクトチーム)である。「必ずしもビジネス性は重視しない」「考えてほしいのは10年後、20年後」という異色のメッセージを投げかけている。彼らは経営企画として大きな夢を語り、目の前のビジネスではなく、未来のリコーのあるべき姿を追っている。直近のビジネスモデルや事業性を求められないのは、エントリーするベンチャー、スタートアップにとってはあるいは特殊な話かもしれないが、フォワードプロジェクトチームが問うているのはあなたの「思想」なのだ。有能な人は目の前のお金よりもチャンスに惹かれるとよく言われるが、フォワードプロジェクトチームへの参画は、エントリーする「人」そのものが問われることになるのかもしれない。それはもしかするとより一層シビアなことなのかもしれないが、一層のやりがいがあるのもまた確かなことなのだ。


■ フォワードプロジェクトチームが求めるもの

  • 独自の持論に基づいた、『働く』を巡る具体的な未来の世界観
  • 未来の世界で、価値高いものを提供するサービス、プロダクト。またはその技術

■ フォワードプロジェクトチームが提供できるもの

  • 経営陣に直接提言する機会
  • 『働く』をテーマにしたグローバルな実証実験の場
  • 2020年秋にオープン予定の大森の新施設への参画。施設を利用した実証実験やデータのフィードバックも

■ こんな人・企業の応募を待ってます

  • 未来を起点にした思考、バックキャスティングができる人
  • リコー100周年の節目でもある、2036年に向けて能動的・自律的に動ける人

経営企画本部 経営企画センター Fw:D Project Team リーダー 稲田旬
経営企画本部 経営企画センター Fw:D Project Team 村田晴紀
 

2036年の未来を提言するチーム

――まず、「Fw:D Project Team」(フォワードプロジェクトチーム)がどのような活動をしているのかを教えて下さい。

稲田「2030年、もしくはリコーが創立100周年を迎える2036年の世界で、リコーが何を大事にし、どんな価値を提供する会社になっているのか、ということを考えるチームです。それは、現在から未来を考察する従来のフォーキャストの考え方ではありません。未来の社会、環境はこうなっているだろう、人の価値観や考え方はこうなっているだろうという『世界観』を考察し、リコーが、その未来の世界の中で価値高いと思われるものを提供する会社になるためには、今何をすべきかを考えるバックキャストの考え方で取り組んでいます。とはいえ、その世界観というのはなかなか言葉で言っても伝わりにくいものです。そこで、『こういう未来があるかもしれない』ということを、さまざまなサービスやプロダクトのプロトタイプを創ることで見せていくということに取り組んでいます。

未来の社会とは言いましたが、切り口はひとつ明確に持っていて、それは「人の『働く』に寄り添う」ということ。これはリコーがオフィスのオートメーション(OA)から複合機といったプロダクトに関わってきた歴史に基づくものでもありますし、今のリコーが提供する価値『EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES』に沿うものでもあります

例えば、今僕らは、2030年の未来ではテクノロジーが人を支えるようになっており、生産性や効率性を求められる仕事はテクノロジーが代替してくれるので、「働く」はその人にしかできない、個性を活かした人間性のある仕事が求められるようになるという世界観を持っています。人間性とは、クリエイティビティ(創造性)とセルフマネジメント、特にクリエイティビティが大切だと捉えています。そのためには人のモチベーションを高めたり、創造性を高めることが重要になるでしょう。そこで、人のモチベーションや創造性を高めたり、ドライブしたりするものは何か、仮説を立てて、今持っているテクノロジーやさまざまな要素を組み合わせて、プロトタイピングし、具現化する。いわば未来価値のプロトタイピングを行っているのです。

さらに、僕がもともと取り組んできた、社員の会社に対するエンゲージメントを高める活動も範囲に入っています。エンゲージメントを高める活動は2017年から行っており、NewsPicksとタッグを組んだ『NewsPicks Enterprise (社内限定版メディアプラットフォーム)』もそのひとつで、リコーグループ向けのエリアを作成し、社員に向けて独自のコンテンツを発信したり、社員同士がPickを通じて交流する場を作っています。創業時のイキイキとした活況を再インスト―ルするために、リコー本社の近くにある大森会館のリノベーションを進めていますが、ここに、フォワードプロジェクトチームで開発しているサービスやプロダクトを実装し、実証実験も行う予定です」

村田「もともと、このチームは2017年の『2030年シナリオ委員会』に起源があるんですよ。シナリオ委員会は、国内外リコー全グループから24名、6チームが選抜されて未来の社会を検討し、新しい商品を提案することが目的でしたが、多種多様なメンバーが集まったために議論がなかなかまとまりきらず、現在の社会の動きをまとめるところで終わり、未来のリコーの姿を提言するところまではたどり着きませんでした。そこで、そのやりきれなかった課題を、フルコミットでやり続けるメンバーを募ったところ、若手4人が残った。これがフォワードプロジェクトチームです。

そういう若手ばかりでしたから、経営のこともまるで分からないところからのスタートでした。僕自身、トナーの開発をしていた一介のケミカルエンジニアでしたから、とにかく枠を広げなければと思って、名刺1枚持って、スタートアップや有識者の方にお会いしにいって、ディスカッションするということを繰り返し、未来の考察を進めました。と同時に、リコーとは関係なく自分たちがやりたいことはなにか、ということも考えていきました。

事業部から離れた経営企画直下のチームだったため、私たちのミッションとしては直近の事業性を求められることなく、未来を考えることのできた贅沢な1年だったと思います。シナリオ委員会で描いた未来の世界観の粒度は低かったのですが、1年かけてディスカッションを重ねたために、精度を高めることができました。2018年12月には社長にプレゼンし、さらに社長とのディスカッションを重ね、さらに世界観の精度を高めていきました。

そして、新しいことをやるには、夢を語りながら手を動かさないといけないことも分かったので、2018年の終わりから予算をつけてもらい、社内副業制度を活用して社内で仲間を募って30名くらいのチームを組織し、ソリューションの開発に取り組みました。そのソリューションは、稲田が進めている大森の新しい施設に実装される予定ですし、そのチームのうち、3名のエンジニアがフォワードプロジェクトチームの仕事が面白いから100%で取り組みたいと異動してきてくれています」

2030シナリオ委員会からFw:D-PTへと移った初期メンバー。意思ある若手の提案と経営のコミットで始まりました。

――世界観を語りつつ、エンジニアと具体的なプロダクトの話に落とし込んでいくのは難しいようにも思います。何か工夫されたことはありましたか。

村田「確かに、世界観だけで語っていると『無理だ』で終わるし、技術論で話すと『それはトレンドじゃない』とか『その技術は意味がない』とか言われるし、難しいですよね。メンバーを募るときは、社内を練り歩いてとにかく『こういう世界観で、こういうものを作りたい』ということを、いろいろな粒度で語るようにしたんです。カメラのレンズを覗き込んで、いろいろなところにピントを合わせるような作業ですね。そうするとボケ味も効いてくるし、ピントの精度も上がるわけです。」

自分の言葉と技術で未来の世界を語れ

――TRIBUSでは、どのような人材、チームを求めているのでしょうか。

稲田「求めているのは、僕らフォワードプロジェクトチームの考えに共感し、独自の具体的な世界観を見せてくれる人。『未来の働くはこうなる』という独自の世界観を持って、こういうものが求められるはずだという具体的なテクノロジー、プロダクト、サービスを見せてくれる人。または、自分たちのプロダクトやサービスを通して『こんな働くの未来がある』と描ける人とも言えます。

昨年のアクセラレータープログラムでは、比較的ビジネスモデルや収益の可能性を重視する傾向もあったかと思いますが、僕たちのチームでは直近のビジネスに取り組むとか、今日明日のお金を稼ぐとかというのとはちょっと違うと考えています。自分の世界観を、自分の言葉とプロダクトで語ってほしい。

とはいえ、世界観を語るだけではなかなか難しいのも事実で、そこにはビジネスとしての将来性の“匂い”もほしい。将来性とはつまり、描く世界観の向こうにいる利用者が見えるかどうかということです。そのサービスやプロダクトに対価を払う人の姿が見えなければ、その世界観に説得力はない。魅力的な世界観であればこそ、そこはきちんと見せてほしいと思います。

ステージとしては、アイデアレベルではなく、ある程度形になった技術やプロダクト、またはサービスをお持ちの方。どんな未来の世界を描いていて、そこではどんなことが重要で、そのプロダクトは、どんな価値を提供してくれるのか。どんな痛みを解消してくれるのか、人の『働く』をドライブしてくれるのか。そこを語ってほしいですね」

村田「僕としては、新施設に実装する僕らの新しいソリューションを使ってくれる人に仲間になってほしいというのはありますね」

稲田「そうですね。これは僕らが提供できるものでもあるのですが、僕らのプロジェクトチームにエントリーし、選抜された方には、新施設も働く場所のオプションとして使ってもらって、未来の働くを創る仲間として取り組んでもらえるとうれしいです。新施設は、ちょうど総合ピッチが行われる秋口に、一部を先行オープンする予定です。施設を存分に利用してほしいし、いろいろな実証実験をしていただきたいですね」

若手アーティスト中山晃子氏との共創活動の様子。技術領域にはとらわれず、様々な手段で価値プロトタイピングを行います。

TRIBUSは「コロナ時代」の試金石

――チームとして2年活動してきた今、リバースピッチとして、改めて社内外に呼びかける理由は。なぜ今なのでしょうか。

稲田「2年活動する中で世界観を構築し、自分たちのアイデアに基づくトライをまず1つ形にするところまで漕ぎつけているんですが、2018年、19年は自分たちのことで手一杯で、余裕もなく、外部に問う準備もできていなかったんです。しかし、ようやくこの取り組みを外部に問うて、ドライブかけることができるようになった。逆に、出していかなければいけない時期だとも言えるかもしれません。

2019年のRicoh Family Group CHALLENGE、アクセラレータープログラムはもちろん知っていましたし、昨年の運営メンバーの面々とは顔なじみで、大企業に楔を打ち込んで歪(ひずみ)を起こす『同志』みたいに感じていました。『NewsPicks Enterprise』で、昨年の運営メンバーの取材をさせてもらったこともあるんですよ。
それで、このプログラムが『TRIBUS』と名を変えて2年目以降もあることを聞いたときには、大森の新施設との相性も良いだろうと漠然と感じていました。

そして、新型コロナ感染症の流行とその後の経済活動の停滞という状況になって感じたのが、未来の『働く』を創る僕らはこのような環境下でもチームの動きを止めてはいけないということと、とは言え新たに作る施設には、すべての人をオープンに受け入れることは難しいだろうということでした。どうしても人は絞らなければならないだろう、だとしたら、この苦境にあっても、未来を見てやりたいことをベースに能動的・自律的に動ける人に入ってほしい。そう考えたときに、TRIBUSになら、そういう人材が集まるだろうと気付いたんです」

村田「僕も、TRIBUSと僕らプロジェクトチームとの相性は良いと思うんですよ。確かに、僕らは直近のビジネス化を求められることなく、10年後、20年後の会社の方向性を考え、見定めるという作業に取り組んできました。その一方で、自分の責任において、自分のやりたいことで、ビジネス性を持たせながら自分の屋台を作ることができるのはとても素晴らしいことです。そこに僕らのチームとのギャップがあるのですが、だからこそ、一緒にやれる余地があります。僕らは夢を語りますが、夢を語るだけでは先に進みません。実際に対価を頂くビジネスにつなげていくには、現場というサバンナで戦わなければならないわけです。そこでお互いに足りないものを補い合って、良いシナジーを生み出すことができるのではないかと思います」

未来価値の空間ソリューションを模索するメンバーの様子。社内副業者、社外パートナー、大学研究室など多様なバックグラウンドもつメンバーがフラットなチームで活動しています。

未来のリコーへ舵を取れ

――逆に、フォワードプロジェクトチームから、エントリーするスタートアップ、社内起業家の方に提供できるものには何があるでしょうか。

稲田「まず、僕らの所属が事業部ではなく、経営企画であることから、狙うべき方向性やフラグを立てるべき場所を、経営陣に直接提言する機会があるということ。これはリコーの進むべき方向を示すことでもあるので、やりがいのあることではないでしょうか。また、『働く』をテーマにした実証実験がやりやすいということもあると思います。グローバルで9万数千人の社員に対して、アプローチすることができます。

そしてもうひとつがファシリティーです。新たに作る施設は、人にフォーカスしたものにするつもりで、採択されたメンバーをはじめ、未来価値を創る人々を集め、コミュニティを形成したいと考えているんです。いわば未来価値を創る人たちが集まる『聖地』です。そこでは、さまざまな機能を実装し、普通の会社では考えられないようなインテリアや空間設計、ディスプレイもします。と同時にセンシングも行って、さまざまデータを蓄積もしていき、価値のある形で入居者にフィードバックしたい。そういう、未来価値を創る人たちにとって意味のある施設にしたいと考えています」

――未来の展望を含め、エントリーする人に一言お願いします。

稲田「リコーにとってひとつの区切りの年である2036年に向かって、独自の世界観と技術を持って挑んでいきますから、ここ1、2年の話ではありません。長期的に取り組める仲間がほしいと思っています。
その一方で、現在の新型コロナウイルス感染症のような事態が発生すれば、時間の感覚は大きく変わることもあるかもしれません。そういうときに、ありたい未来の方向性は保ちつつも柔軟に対応し、より良い価値を提供する方法を考えることにもチャレンジしてほしい。例えば、新型コロナで東京に緊急事態宣言が出た翌日に、村田のチームは それが及ぼす影響を早急に検討し、見据えている未来にズレがないことを確認し、新たな価値を乗せていく取り組みを始めています。

僕らが考える未来の世界では、『働く』が苦役ではなく、自分らしさを表現するものになると思っています。TRIBUSをきっかけに、そういう人が増えてくれればいいなと思うし、そういう企業が増えたら素晴らしいことです。そのときに、一番大きな旗を振っているうちのひとつがリコーであればいいなと考えています。ぜひ、一緒に未来の世界を作っていきましょう」

村田「リコーグループには、グローバルも含めると世界で9万人以上の社員がいますけど、この全員が真剣にひとつの方向に動けば、世界を変えられる可能性があると思ってるんですよ。少なくとも僕は本気でそう思って取り組んでいるし、真剣に未来の『働く』を変えるつもりです。同じように考えてくれる人と一緒にこれからの活動に取り組みたい。みなさんのエントリーを楽しみにお待ちしています」

TEXT BY Toshiyuki TSUCHIYA

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