大企業とベンチャー企業の共創のキーとはなにか。 ランジェリーの開発から見える「思い」と「尊敬」

2020年「TRIBUS」のテーマのひとつに「社外スタートアップとの共創」がある。社外のスタートアップを募集した2019年のプロジェクトはその端的な側面を表すものであったが、社員向けの社内起業支援プログラム「Ricoh Family Group CHALLENGE」からも、図らずも社外ベンチャーと共創し、成果を得たケースがあった。インド女性向けのランジェリーを手掛ける「Rangorie(ランゴリー)」である。発起人の1人、江副亮子氏は元リコー社員で、インドでのBOP(Base of the Pyramid)ビジネス立ち上げに携わった経験から、女性向け下着や靴のカスタマイズサービスの企画を検討していた綿石早希と組んでチームを設立。ミッションは「ランジェリーを通して、インド女性の人生を豊かにする」。ランジェリーのオリジナルブランドを持ち、大手企業とのコラボ、タイアップ等も手掛けるメーカーであり、クリエティブブティックでもある「XY」とタッグを組んで、超短期の商品開発とテスト販売を実現し、成果発表会で話題となった。この強力なタッグ双方に聞いた活動の足跡は、TRIBUSにチャレンジしたいリコー社員、リコーとコラボしたい社外スタートアップ双方に役立つものとなるに違いない。

株式会社XY 代表取締役会長 高橋聖渚氏、取締役社長 織田愛美氏
元リコー社員 江副亮子氏
株式会社リコー イノベーション本部 綿石早希


■「いきなり」でも「誠実」

――今回は、ランゴリーのお二人がチームとなって、外部のベンチャー企業であるXY様と共創した形ですが、どのような経緯で成立したものだったのでしょうか。

綿石早希「もともと、私がソフトウェアの設計の部署で、江副さんの旦那さんと同じ職場にいて、家族ぐるみのお付き合いをするようになって、江副さんとも親しくなったんです。もう6、7年になりますね。お互いアメリカ駐在のときは、よくお家にも遊びに行かせてもらって。江副さんのお子さんとも親しいんですよ」

江副亮子氏「このプロジェクトを一緒に立ち上げることになったのは、関内でランチを食べたのがきっかけでしたよね。社内でRFG CHALLENGEというのが始まったよねって話していて。山下公園の近くだったんだけど、『前回私が山下公園に来たのは、インドフェスの時だった』という話から、『私、インドで下着を作ってみたかったんだ』と切り出したら…」

綿石「それ、やりましょう!ということになったんです。江副さんは良いインサイトをお持ちだし、私のやりたいと思っていたことにもぴったり来るなって思いました。
私はおばあちゃんっ子だったものだから、男性優位社会な感じの昭和マインドで育ったんですけど、大人になってから、いろいろな国を見聞きするうちに、男女平等な考え方をインストールされて、女性を縛っているものをなんとかしたい、女性をもっと解放する活動に取り組みたいと考えるようになっていたんです。それはプロダクトでもサービスでも良かったんですが、下着か靴のカスタマイズで何かできないかと思っていたんです」

――XY様とはどのような経緯でつながったのですか?

綿石「社内ピッチを通過して次のステージに行こうという段階でコンタクトを取りました。10月だったと思います。市場調査をしてテスト販売をしていこう、という段階だったんですが、私たちは下着を『作る』ことにかけてはまったくの無知でした。それでいま思えばまったく無謀だったんですが、下着の作り方を一から教わろうかと思って、教えてくれそうなところを探したところのひとつがXYさんでした」

江副「もちろん、さすがに私達が作ったものを売ろうと思ったわけじゃないんです。下着を作って売ろうというときに、下着についての知識をまず得たいと思ったのと、この業界にまったく通じていないので、いろいろな関係者を知りたいという思惑もありました」

綿石「XYさんは自社ブランドをお持ちなだけではなく、コンサルティング的に他社との企画をなさったりしていたので、『いまから勉強したいんですけど』と正直に問い合わせをしたんです」

――いきなりの連絡だったかと思いますが、どう思われましたか?

高崎聖渚氏「リコーという名前を見て、『あのリコー?』と目を疑いました。複合機を作ってるあのリコーだとしたら、下着とあまりにも距離がありすぎる。本当にあのリコーなのかどうか、メールのアドレスを確認してしまったくらいです」

織田愛美氏「最初のメールでタイトルに『知見提供について』とあり、まずは直接お会いしたいと書いてありました。弊社は創業時から大きなメーカーさんから、デザインの委託を受けたり、コレクションのサポートの依頼を受けたりすることは多いのですが、正直言うと大手企業とはうまく進まないことが多いのです。大手との取引は難しい、弊社のクリエイションとはマッチしない。連絡をいただいた最初はそういう不安がありました。
しかし、綿石さんとお会いして、その不安は見事に吹き飛びました。やりたいこと、未来のビジョンが明確に描かれていて、大手企業らしからぬ(笑)熱意に溢れていました。その熱がすごく伝わってきたんです。

一番感じたのはシンパシー。弊社も女性の人生を豊かにしたいという思いがあり、そのためのサービスやプロダクトを提供することをミッションにしています。下着というのは手段のひとつに過ぎません。そのプロセスが一緒だったんですよ。ランゴリーの願いも、インドの女性の地位向上、就労支援。そこから『下着』という選択が出てきているわけじゃないですか。
直接お会いしたときに、綿石さんからは情熱がダイレクトに伝わってきたし、『嘘がない』というまっすぐな誠実さも感じました。そして江副さんからは、インドで直接感じた現状や課題感をお話しいただいて、強い説得力があることも感じました。そして、この2人には熱意の先にある志が揃っているから、間違いがない、そう思えたんです」

江副「飛び込んで正直にお話ししたんですよね。下着づくりはやったことはありません、でもこういう理由でやりたいんです。無理そうだけどやりたい、一生懸命やりますから、教えて下さい。インドの女性たちに仕事を提供したい、人生を楽しんでほしい、その一心でした」

織田「作り方を教えてほしいとはおっしゃっていたんですが、ブランドにするなら、ちょっと間に合いませんよと。弊社も百貨店からプライベートブランドの委託を受けることはあるので、それと同じようにやるのでしたら、ご一緒にやりましょう。ということになったんです」

■「やりたいこと」が明確かどうか

――どのように企画を進めたのでしょうか。

高崎「普段、クライアントさんからいただく仕事に比べると、正直言うと“すっとばして”進めました。とにかく短期間でやらないといけなかったので。 通常ですと、デザインの選定から、素材、カップや金具などのパーツひとつひとつまで、クライアントに確認をとって進めないといけないんですね。だから時間がかかります。サンプルを作る場合でも、工場付きのサンプル室で工業製品に近い形で作るものですから、それだけで3週間は掛かるんです。自社商品開発の場合は、サンプルは自分で作って期間を短縮することはあっても、それでも半年は掛かります。そこを今回は、1カ月に満たない期間でやらなければならなかったんです。

それができたのは、まず、ランゴリーチームのお二人が、何をやりたいのか、具体的なイメージをお持ちだったこと。インド人の好む柄を使う、インドの気候に合ったものにする、というはっきりとした方針がありました。クライアントによってはそのイメージがはっきりしていなかったり、担当者が理解していなかったりとか、とにかく面倒なことが多く、やりとりの回数も多くなりがちです。しかし、お二人のイメージが明確であったために、こちらもやりやすかったし、やり取りも少なくてすみました。このことが、後々まで効きました。

すっとばした、というのは細かい確認です。デザインにしても、お二人がバーっと抽出してくださった柄のイメージに合わせて型を作り、この型に合わせて、色柄の組み合わせをランゴリーチームに決めてもらいました。このようにファーストインプレッションの部分は特にしっかり確認してもらいましたが、それ以外の細部はこちらに任せていただいたんです。例えば各パーツは『私はこれがいいと思うんですけどどうでしょうか』と写真で確認してもらうというようにです。言ってみれば、お二人のイメージを、私たちプロがブラッシュアップしたような形だったと思います。 製造工程については、工場の皆さんにもすごくご協力いただいたんですよ。通常、工場は短納期のものは、信用問題にもつながるのでやりたがりません。ましてや、今回は小ロットですからなおさらです」

織田「補足すると、その点は工場の皆さんにも、ランゴリーチームの思いを伝えて、賛同してもらえたので実現したんだと思います。職人さんの多い業界でもありますので、意気に感じてもらったことが大きい。それで無理なお願いも聞いてもらえたんです」

高崎「今回は、短期間でスピードを上げてやることの、すごく良い特訓になったと思います。下着のパーツはそれぞれメーカーが異なるので、一つひとつ調達して染めてということをやっていたら時間が掛かってしまいます。なので、素材部材はすでにあるもの、調達できるものから選ぶようにするなど、素材の調達や選び方でも工夫しています。工場とも、いつも以上に密なやり取りをして、距離が近くなった感じがありました。一緒に苦労を乗り越えたね! 納品できた! 拍手!という感じになったんですよ(笑)」

――非常に速い展開で進められたわけですが、それをどうご覧になっていたのでしょうか。

江副「私たちは下着の制作のことは分からないので、すっかりプロの方にお任せすることができてよかったという感想です。安心して進められました。
ただ、年末年始を挟むスケジュールで、工場が止まる期間もあったので、とにかく納品に間に合うのかという不安はありました。こちらは販売のためにインドに行く日程は決めてあって、モノがなかったらどうしよう、と毎日が不安で心臓がギューッとしていました。もともと無理なお願いをしているという自覚はあったので、申し訳ないな、スミマセンスミマセン!とは思いつつも、絶対期日までに納品してください!と(笑)」

綿石「実は、私のほうはさらに綱渡りな状況でした。先にインドに入って販売準備を進めていたんですが、売り場を確保するのが難航していて『商品は届いたけど売る場所がない』なんてことになりかねない状況だったんです。だから、『納期通りにお願いします!』と言いつつ、どうしようと焦ってもいたんです。
1カ月、ショッピングモールを回ってポップアップショップの設置をお願いしましたが、全部断られていて、最終的に決まったのが、商品が届く2週間前のことでした」

江副「私がインドに行ってから、ギリギリで決まったイベントもあったりするなど、販売にはいろいろ苦労がありましたよね」

■「現地視線」がキーポイントに

――現地での販売はどのような状況でしたか。インドの女性からの反応はいかがでしたでしょうか。

綿石「ショッピングモールにポップアップショップを設定して販売したのが3日間、女性の起業家コミュニティに協力してもらって、お祭りの横で販売会を開いたのが2日。それから、女性起業家のイベントオーガナイザーの協力で、高級アパートの1階部分で開催するイベントで1日販売させてもらって、計3会場で6日間販売することができ、想定していた販売実績とレスポンスを得ることができました。

理想を言えば、小さいキオスクにして、試着スペースも作って、1週間くらい設置したかったんですけど、法規制の問題もあるし、うちのような名もないブランドには信用もないし、3週間という短期でリースさせてくれるところもありません。試着は近くのお店の試着室やトイレをお借りしたり、イベントでの販売会のときには、シャワーカーテンみたいなのを吊るして簡易な試着スペースを作ったり、いろいろ工夫はしましたね」

江副「リコーグループの現地会社にも協力してもらって、会議室を予約制の試着室代わりに使わせてもらったりもしたんですよ。試着はすごく大事で、一度購入された方が、後日試着室を予約して、サイズを変更されたということもありました」

綿石「ムンバイでテスト販売できたのは良かったですね。ムンバイはアメリカで言えばニューヨークみたいな街。金融とファッションの中心地で、映画の街でもあります。ボリウッド女優もその辺を普通に歩いているので、そういう人たちにもアピールできました。ランゴリーを気に入ってくれたボリウッド女優がSNSでつぶやいてくれたのは、棚ボタ的なラッキーでした」

江副「将来的にそういうこともできたらいいねーと話してはいたんですけどね」

綿石「モノとしては、インド柄に着目したのが良かったのかと思います。テストしたいポイントでもありましたが、それがバチッとハマった。正直言うと、私は去年の夏までインドに行ったこともない、極めて日本人的なセンスなので、初めて商品を見たときは『激しいな!』と思ったんですけど(笑)」

高崎「そのインド柄に振り切ったというのが良かったんですよ。日本人の企画だとどこか日本らしさが抜けきらないものですが、今回は、完全に現地視点だったでしょう。
私も、インドの気候に合うように、乾きが早い生地を選ぶ、インドの女性はバストが大きいので、カップも深くするなど、現地のことを考えて作りました。あとは、サリーの構造に合うようにしたことですね。サリーを着たときに、肩紐が見えにくいように背中を大きく空けるといったことに注意していました」

江副「私が下着に着目したのも、サリーがすごくファッショナブルだからなんですよね。あんなに美しいサリーに合う下着がない、あればもっとみんなきれいになるのに!という思いから始まってるんです」

高崎「サリーにも合って、見えても良い下着というアイデアは良かったですよね」

綿石「高崎さんのお話を伺っていて思い出したんですが、現地では触り心地がすごくウケてたんです。見慣れたインド柄なんだけど、素材感が違う。『知ってる柄だけど、この生地ちょっと新しいわね! モダンな感じがするわ!』(笑)。すごく評判が良かったです」

江副「インドの女性は素材に対するこだわりがすごく強くて、特に触り心地とストレッチ性、すごくチェックしますよね」

高崎「伸縮性があって発色が良くて、発汗性・通気性の良い生地ということで選んだ素材でした。イメージとしては、水着に近いような生地ですね。決して珍しい素材ではないんですが、日本の布作りのクオリティが高かったおかげです」

■「苦労」の連続だったプロジェクト

――いろいろご苦労もあったかと思いますが、どのようなエピソードがありますか。

織田「今回は、高崎が集中できる環境を作るのが自分の業務だと思っていました。その点で、まず工場にランゴリーチーム、そして高崎の思いをどう伝えるか、というのが苦労した一点目。どのように伝えるか、嘘なく、誠実に伝えることを意識しました。これは結果として、納期に対するコミットメントにつながったと思っています。

もう一点は、納期に対する苦労ですね。アパレル業界では、納期に遅れることもある、ということを理解してもらうのが大変だったこと。一方で、インドでのテスト販売という明確な締め切りがあったので、そこに向けて間に合わせるために、工場にはひたすら熱意を伝えてがんばってもらいました」

高崎「納期の苦労は大前提としてありましたが、クリエイティブの面では、インドの方と直接コミュニケーションを取れなかったこと、私がインドに行ったことがない中で制作したのが苦労したところです。その国の匂いや温度、空気感などを実際に体験することなく下着を作るのは初めてのことでした。

地域によって、太陽の色、温度、空気というのは異なるんです。例えばパリは北海道と同じくらいの緯度ですが、当然北海道とは温度も湿度も異なるし、太陽の強さも異なる。だからレンガの色も変わって見える。そういうものが反作用的に影響し、共鳴し合って街の空気を作るし、そこで暮らす女性はその空気をまとっているものです。それは帰国子女がまとう雰囲気がちょっと違う、というのに近いのかもしれません。その点、今回、インドの女性のための下着を作るにあたって、私はインド女性の生の感覚をまったく知らないまま取り組まなければならなかったわけです。

その欠落を埋めてくれたのが、江副さんたちが話してくれた現地の情報です。現地でどういう状況なのか、どんなことで悩んでいるのか、インドの下着を見せてくれながら説明してくれたんです。そのおかげで、インドの女性の感覚に触れることができたし、徐々に紐解くことができたんだと思います。妄想みたいなものだったかもしれませんが、結果として、現地で良い評価を得られたと聞いて、心底ホッとしました」

江副「大変だったのはやはり販売、特に売り方に関することでしょうか。特にフィッティングは難しい点だと感じました。文化的な違いもあって、インド女性は体に触れられるのを極度に嫌がるんです。日本だと、フィッティングのときに女性スタッフが普通にぐいっと下着に手を入れますが、それはまずできません。試着室に入られるのも嫌がられるという状況の中で、いかにして、フィットした下着をつけることの快適さを味わってもらうか。まだまだやるべきことは多いなと感じています。

また、ポップアップショップという形態は適切なのかどうか、ネットでの通信販売という手もありますが、試着ができない問題をどうするか。ランジェリーという、プライベートなもので、だからこそ密やかな楽しみもあるファッションを、どうやって広めていくか。コスメだったら『このコスメいいよ!』とSNSにも簡単にアップしてくれますが、『このランジェリーいいよ!』とは、なかなかアップしてくれないじゃないですか。そこのコミュニケーションの扱いに難しさがあるかなと思います」

綿石「私が苦労したと思うのは現地の販売体制構築ですね。法的な問題だけでなく現地の習慣の違いもあって、本当に何も分からない中、ゼロからたぐり寄せていった、というのが実情です。
インドは男性優位志向の強い国なんです。一応、私たち外国人は“別枠”ではあるんですが、女性のビジネスマンがリスペクトされることはありません。伝統的な見方をする男性からは端から相手にされないこともありました。だから逆に発奮して取り組めたということはあるんですが(笑)。そういう外国人としての難しさ、それから保守的な文化での女性向け下着という商材の難しさ。その2つの難しさがあったんだと思います。

現地では、リコーの名刺はほとんど使わなかったんですよ。政府系の方などにはリコー社員としてご挨拶しましたが、ショッピングモールなどでは、逆にそれは隠していたんです。日本の大企業が来たと思われたくなかった。日本からは来てるんですが、スタートアップとして、インドの女性の人生を豊かにしたいというビジョンに賛同してくれる人たちと組みたいと思ったんです。こうやって、大企業の名刺とベンチャーの名刺を使い分けて取り組むことができるのは社内起業の良い点だったなと思います」

■『何をしたいのか』という目標をはっきりさせておく

――今後について、展望や予定がありましたらお願いします。

綿石「今回、このプロダクトでテスト販売できたわけですが、ブランドとしての世界観がまだ固まっていないことが課題だと思っています。ブランドとしてどうやってコミュニケーションしていくかも問題。今回比較的高めの価格設定にしていて、ボリウッド女優など感度の高いアーリーアダプターには好評でしたが、本当のターゲットであるごく一般的なインドのOLさんに対してどうやって届けるかといった課題もあります。こうした課題を詰めていって、今年度中には、正式にローンチさせたいと考えています。

今回こうやってまがりなりにも順調にスタートすることができたのは、XYさんとご一緒することができたから。リコー社内だけで下着を作るなんてとてもじゃないですが、できっこない(笑)。社内にはない専門的知識、スペシャルスキルに助けてもらいました。

社外の方とうまく進めていくコツですか? そうですね、今回は私達が考えていた『やりたいこと』が明確になっていて、そこに共感していただけたことだと思います。だから単なる業務委託先と業務委託元ではなく、一つのチームとしてものづくりができたんではないでしょうか」

江副「その点はまったく同感で、『何をしたいのか』という目標をはっきりさせておくことが何よりも大事です。今回でいうと、最終的にはインドの女性の雇用を創出することが目的です。下着はそのひとつの手段に過ぎません。その点、XYさんもまったく同じで、下着会社としてスタートしたのではないし、下着はあくまでも手段として考えている。そこが同じだったのは良かったですよね。今後は、もしかしたら、下着以外の手段もいろいろ考えることもあるかもしれません」

綿石「今後も引き続き、XYさんにはデザインを担当していただく予定です。また、国内でもなにかできないか、という話も進めているんですよ」

織田「このインド柄のランジェリー、日本の女性からも反響があったんですよね。ほしいというリクエストも多いので、まったく同じ柄ではなく、日本向けにアレンジしたものを国内販売できたらと。その利益をインド女性の就労支援に還元することも考えています。そうやって弊社のクリエイションを通して、ランゴリーのコンセプトや、マインドを広めるお手伝いができたらと思います」

――ベンチャーとして、大企業と組めてよかった、という点はありますか。

織田「正直に言うと、弊社は2015年に創業していますが、企業理念に沿った活動実績がまだなかったんです。今回のこのプロジェクトは、理念に沿った、初めて表に出せる実績になったと思います。そのおかげで、社としてはオファーを受ける仕事の内容が変わりましたし、信用度も上がったと感じています。『信用』というのは、社会貢献性だけでなく、同時に事業としての収益性もある、というその2つの点で評価されたということです。

このように、社としてスケールアップするきっかけになっただけでなく、個人としても経験値を上げることができたとも思います。江副さん、綿石さんのお二人を通して、大企業の中で働くということの実情や、大企業のロジックなどを学ぶことができた。これは、ベンチャーである私達には明らかに欠如していたものでした」

高崎「会社としては織田が言ったことに完全同意です。 あとは、個人的にスピード感を上げるものづくりを体験できたのは良い経験になりました。アパレル業界は、割と制作に長い時間を取るし、できるだけのことをやりきろうとする傾向が強いんですよね。それが、今回は良い意味で『ここまで』という区切りが明確にあって、連続して素早い意思決定をしなければなりませんでした。クリエイティブとしては貴重な経験だったと思います。

あと、今回の経験を通して、大手企業の方々のお役に立てる道筋が見えたようにも思います。XYという会社は、これからの社会で私たちのような社会の端っこで生きている変なクセのある人間が必要になるんじゃないか、そう思って早々に起業したものだったんですけど、その考えが間違いじゃなかったと感じました。例えばイノベーティブさを追求しようという場合、私たちのような大企業に属していない人間が好き勝手言うことがすごく役に立つ。大企業とベンチャーなんて水と油ですけど、交わることができれば面白いことができる。今回は私たちにとってもその良い例になりました。インドで下着を販売するなんて、私たちだけでは絶対にできなかった。同じように、リコーさんもリコーさんだけでは下着を開発することはできなかったかもしれない。その意味で、お互いにできることを掛け算し、できないことを補い合ってプロジェクトにすることができた。本当に面白かったです」

■同じひとつのチーム

――ベンチャー企業が大手企業とうまく付き合うには、どういうコツがありますか。

高崎「私たちでよく話していたのは、『同じひとつのチームのつもりでやる』という気持ちです。織田も『熱量』という言葉をよく使っていましたが、立ち場は違えど目的は同じ、という感覚。共鳴して、シンパシーを感じて、意思統一できたことが大きかったと思います。私たちはランゴリーさんに惚れ込んでしまったし、ランゴリーのお二人も、私達を信頼し、認めてくれたと思います。そういう相互の信頼と尊敬があったから、一緒に目的にコミットできたんだと思いますね」

織田「感情的な面ではまったくその通りだと思います。実務面で補足すると、創業したばかりのベンチャーが大手と一緒にやろうとすると、『無料でもいいからやらせてください』と言っちゃうこと多いじゃないですか。そしてペースも大企業側に合わせちゃう。私も経験ありますけど。でも、それだとやっぱり続かない。今回は、契約書の文面ひとつとっても、こちらのわがままを聞いてもらったり、できること・できないことを正直に話したりすることができました。ベンチャーの人が大手とやるときには、お互いがそういうクリアな気持ちで取り組める状況を作ることが大事だと思います」

綿石「ここまでずっと前を向いて走ってきて、じっくり話すことがなかったけど、今回、インタビューという形で振り返ることができて良かったです。今日は本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします!」

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